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【ワレコの電子工作】FET & CRD選別冶具(改訂版)を作る[2/2]

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写真 これからFET & CRD選別冶具(改訂版)を半田付けするので水分補給して体調を整えている人

当記事は、ぺるけさん設計の「FET & CRD選別冶具(改訂版)」をワテが製作した過程の紹介記事だ。

全二部作の後半部分である。

前半部分は以下の記事で紹介した。

【ワレコの電子工作】FET & CRD選別冶具(改訂版)を作る[1/2]
写真 自作のFET & CRD選別冶具でパーツを選別して自作ヘッドホンアンプを作って聴いている人 オーディオの世界には〇〇式と呼ばれる流派が幾つかある。 ワテが知っている有名なものだと、 金田式 安井式 窪田式 佐久間式 ぺるけ式 などかな...

では、早速後半部分を紹介したい。

結論としては、いい感じで完成した。

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定電流回路を作成する

下の写真で右側部分は三端子レギュレータTA7812Sを使って12VDCを生成する電源回路だ。

写真 左側基板が2CS1815GRやダイオード、ツェナーダイオードを使ったぺるけ式定電流回路、右は三端子ICで即席作成した12V電源回路

右側の12V電源回路はぺるけさんの製作例にはない。ワテオリジナルで追加したのだ。

電源回路の入力は15VDC以上くらいを想定している。

ワテの場合は、下の記事で紹介しているように、ジャンク屋で買ったACアダターを数個使って実験用の多出力電源を作成している。

【ワレコの電子工作】格安で実験用の定電圧電源を作る【JFETの Idss測定】
電子工作をする上で先ず必要なのは電源だ。 こう言う定電圧電源を持っていると便利だ。 オーディオ系の自作が趣味の人なら、正負の2電源が必要になる場合が多いので、同じ物を二台買っておくと良いだろう。直列接続すれば正負2出力の電源が簡単に得られる

今回、この電源のDC20V出力を利用して12Vを生成する事にした。

ぺるけさんの製作例では12ボルトのACアダターを採用している。

定電流回路のプリント基板

写真 定電流回路には複数のケーブルが来るのでコネクタ式にした

 

写真 定電流回路基板の裏側

 

まあ、あまり深く考えずに手持ちのパーツを使って即席で設計して作成したのでヘンテコな構造になってしまった。

まず最初にシャーシを適当に作成したが、スイッチ類を数個取り付けると、シャーシ内部にも出っ張るので、利用出来る内部空間が減ってしまった。

それくらい事前に気づけよ!

アホなワテである。

その結果、苦肉の策でL型の配置にしたのだ。

取り敢えず、電源回路と定電流回路は出来た。

二枚のプリント基板の接合には、抵抗などのパーツの切った足(リード線)を使って半田付けをして固定した。

そのうちの二本のリード線は右側基板(12VDC回路)から、左側基板(定電流回路)へ+12,GNDの配線にも使っている。

まさに行き当たりばったりだが、結果的には二次元平面ではなくて3次元空間にリード線を這わせると言う画期的な配線に出来た。

コネクタ用の圧着工具がお勧め

定電流回路には7本の電線が来るのでメンテナンス性を考えてコネクタ式にして脱着を容易にした。

ワテが使ったコネクタは、以下の示すような製品だ。

基板側にはピンヘッダを半田付けする。

ケーブル側にはピンコネクタを取り付けて、黒い樹脂製のハウジングに差し込めば完成だ。

この手のコネクタを作成する為には専用の圧着工具が必要になる。

コネクタ用の圧着工具は各社から販売されている。

 

有名なものはエンジニア社製の製品だ。

PA-20とPA-21と言う似た様な製品がある。

エンジニア社のサイトで調べたところ、PA-21のほうが改良型らしい。

エンジニア 精密圧着ペンチ PA-21の仕様

  • サイズ : 57X175X12mm
  • 各ダイス幅 : 1.6mm、1.9mm、2.2mm、2.5mm
  • 各ダイス高 : 0.8mm、1.0mm、1.2mm、1.4mm
  • 各ダイス厚 : 1.8tmm、1.8tmm、1.8tmm、1.8tmm
  • 各参考対応電線 : 0.41~0.51mmφ、0.41~0.64mmφ、0.51~0.81mmφ、0.64~1.02mmφ
  • 各参考対応電線 : 0.13~0.21mm^2、0.13~0.33mm^2、0.21~0.52mm^2、0.33~0.82mm^2
  • 各参考対応電線 : #26~24、#26~#22、#24~#20、#22~#18

100種類以上の端子を理想の形に圧着可能!!

『PA-20』と『PA-21』はダイス形状が違う

『PA-20』と『PA-21』はよく似ているが、写真を見比べるとダイス形状が違う。

ダイスとは、コネクタを挟み込んで圧着する刃先の部分だ。

『PA-20』と『PA-21』の写真を見比べてみると、確かに形状が微妙に異なる。

エンジニア社のサイトにある説明では、PA-21では、コネクタのバレル(羽の部分)が長いものにも対応しているとの事だ。

バレルとは、下図に示す二枚の羽状の金属部分。圧着するとこのバレルがクルッと丸まってケーブルを挟み込む。

従来の製品では長いバレルを圧着すると上手く行かない場合が有ったらしいが、PA-21ではその辺りが改良されているらしい。

なので、買うならPA-21(オレンジ色のグリップ)が良いかな。

ちなみに、ワテの場合には、コネクタ用の圧着工具は持っていないので、ラジオペンチで手作業で曲げている。でも上手く作るのは難しい。

曲げた金具の部分が出っ張っていて、黒いプラスチックのハウジングに奥まで差し込めないトラブルが多い。

と言う事で、ワテも近々このPA-21を購入したいと思っている。

その時には、一緒にこんなコネクタキットを買っておくと便利だろう。

 

さて、作業の途中結果は省略するが、ほぼ完成した。

ほぼ完成したFET & CRD選別冶具(改訂版)

写真 ほぼ完成したFET & CRD選別冶具(改訂版)

いい感じで完成した。

製作では、先日購入したワイヤーストリッパーが大いに役立った。

ワテの場合、思い切って二種類買ったのだが、良く使うAWG22, AWG24あたりの細目の電線はどちらの製品でも対応している。

No.3500E-1(赤色) 適用:  (太線) AWG 12/ 14/ 16/ 18/ 20/ 22/ 24

No.3500E-2(黄色) 適用:      AWG 18/ 20/ 22/ 24/ 26/ 28/ 30 (極細)

AWG表記は数字が増えるほど細くなる。

もし一台買うなら黄色がお勧めかな。

それだと極細のAWG30まで対応しているし、逆に少し太目のAWG18やAWG20にも使える。

 

仕様を比較すると以下の通り。

No.3500E-2(黄色) 電線直径
No.3500E-1(赤色)
ワテ一押し ワテ第二推薦
ベッセル(VESSEL) ワイヤーストリッパー No.3500E-2 ベッセル(VESSEL) ワイヤーストリッパー No.3500E-1
AWG 導体直径[mm]   AWG 導体直径[mm]
30 0.25 細い  
28 0.3  
26 0.4    
24 0.5   24 0.5
22 0.65   22 0.65
20 0.8   20 0.8
18 1.0   18 1.0
    16 1.3
  14 1.6
  太い 12 2.0

表 ベッセル(VESSEL) ワイヤーストリッパーNo.3500E-1(赤色)とNo.3500E-2(黄色)の比較

このように、黄色いグリップのほうが細い線に対応しているので、電子工作派にはお勧めだ。

 

AWG28(0.08sq相当品)の例

サンコー電商 UL1007 耐熱ビニル絶縁電線 黒白赤黄緑青茶橙灰紫 各2m AWG28 2m <10色> UL1007 AWG-28 2m X 10色

AWG28は細目の電線だ。ワテの場合はLEDなど電流の少ないところに使う。ぺるけさんのサイトには”0.08sqは0.3Aくらいまで”と記載されている。

 

AWG26(0.15sq相当品)の例

サンコー電商 UL1007 耐熱ビニル絶縁電線 黒白赤黄緑青茶橙灰紫 各2m AWG26 2m <10色> UL1007 AWG-26 2m X 10色

AWG26になるとこの商品の場合0.15sqだ。ワテの場合、通常はこれくらいの電線で配線する。

 

AWG24(0.2sq相当品)の例

サンコー電商 UL1007 耐熱ビニル絶縁電線 黒白赤黄緑青茶橙灰紫 各2m AWG24 2m <10色> UL1007 AWG24 2m X 10色

AWG24になると少し太目。ワテの場合、この電線も良く使う。AWG26とAWG24の使い分けなどはしていない。色で電線を選ぶので紫色のAWG24が無ければ紫のAWG26を使うなど。

 

AWG20(SQ相当品)の例

サンコー電商 UL1007 耐熱ビニル絶縁電線 黒白赤黄緑青茶橙灰紫 各2m AWG20 2m <10色> UL1007 AWG20 2m X 10色

AWG20になるとこの製品の場合0.5sq相当品なので電子工作では、太い部類の電線になる。電源などの配線に使っている。

 

と言う事で、ワテお勧めはNo.3500E-2(黄色) だ!

AWG30(0.25MM)~AWG18(1.0MM)までの線芯直径に対応している。

 

以下、シャーシや操作スイッチに関して重要な点を説明しておこう。

ゼロプレッシャーソケットのレバーを右配置

ゼロプレッシャーソケットのレバーを右配置にした。

ワテの場合、右利きなので右手でレバーを操作するほうがやり易い。またレバーを倒したり起こしたりする動作は事前にシミュレーションしたのだが、レバーが横を向いているほうが操作し易い。

レバーが縦、つまり自分の方に向くとやり辛いのだ。

かつ、レバーの下部に空間が開いているので、レバーを摘まんだ親指と人差し指が自由に動ける空間が広い。もしアルミシャーシの天板があるとレバーを摘まみ辛い。

要するに上の写真のシャーシは、見た目はヘボイが、事前に入念に操作性をシミュレーションをして操作スイッチを完璧な位置に配置にしたのだ。完璧な設計は1ミリたりともその位置をずらす事は出来ないのだ。

ほんまかいな。

どんな足の並びを持つFETでも完全に対応

ゼロプレッシャーソケットは

D G S G D

の配置にした。

その後気付いたが、↑は間違い。

D G S D G

にすべきだったのだ。

これなら

2SK117, 2SK170のDGSの配置にも対応するし、

┏━━━┓
┃   ┃
┃   ┃
┃   ┃
┗┯┯┯┛
 │││
 │││
 │││
 DGS

 

2SK30A, 2SK246のSGDの配置にも対応する。

┏━━━┓
┃   ┃
┃   ┃
┃   ┃
┗┯┯┯┛
 │││
 │││
 │││
 SGD

 

要するに、このDGSDGの5端子方式を採用した事により、FETが以下に示すどんなパターンの足の配置だとしても対応出来る。

  • DGS 2SK117, 2SK170など
  • DSG
  • GSD
  • GDS
  • SDG
  • SGD 2SK30A, 2SK246など

まあこんな脚の並びを持つFETがあるのか無いのかは知らないが、余っているICソケットの端子を使わないのは勿体ないので使ったのだ。

念のために図解してみた。上から見た図だ。

 

これで全6種類の脚の並びに完全対応出来る。

現状では、間違ってDGSGDで配線してしまったので、時間があればDGSDGに修正したい。

=> 2023/3/15 先日修正した。

トグルスイッチの位置も入念にシミュレーション済

また、S4スイッチは測定(ON)-OFF-ONの切り替えスイッチだが、それも右手で操作し易い位置に持って来た。

一方、S5スイッチはFET1/FET2の切り替えスイッチだが、通常はFET1かFET2のどちらかに固定しておくので、普段はあまり使わない。なので、操作の邪魔にならないように少し奥の位置に配置した。これによって左手がS5にウッカリ当たってしまう事故を避けられる。

ここまで緻密に計算してトグルスイッチの配置が最適化されているのだ。

LED赤、LED緑

赤色LEDの目的は以下の通り。

<LEDの目的>

これはなくてもいいのですが、IDSSの測定モードで被測定素子にかかる電圧がほぼ10Vとなるようにするための電圧ドロップです。ない場合は約12Vがかかります。

引用元 http://www.op316.com/tubes/toy-box/tester2.htm

ぺるけさんの製作例では、このLEDは8P平ラグに乗っかっていてシャーシの中に隠れている。

一方、ワテの場合には、LEDはシャーシ上部のS2スイッチの手前に配置した。

S2を奥に倒してIDSS測定モードにした場合に、このLEDが発光する。それによって今はIDSS測定モードになっている事が視覚的にも分かり易い。

この点はぺるけ先生も思い付かなかったと思われるワテ流の工夫だ。

ちなみに使ったLEDはサトーパーツの

DB-1-N-CHR

と言うクロームメッキした金属ブラケット枠が付いている赤LED。

発注型番 DB-1-N-[本体色][素子色]

ご注文例 DB-1-N-CHR (本体色クローム、素子色赤でご注文の場合)

引用元 http://www.satoparts.co.jp/JPN/item/DB/DB-1-N/

CHRはChromeメッキ製でRedと言う意味だ。まあ、そんな事知っていていても何かの役に立つかな?

フロントパネルには、同シリーズで緑のタイプを使った。DB-1-N-CHGだ。

サトーパーツのサイトで特性表を見ると、赤、緑共に推奨動作電流IF(mA)は15mAだ。ワテの場合、あまり明るく光るLEDは嫌いなので、フロントパネルの緑LEDは10mAで控え目な光量にした。

ちなみに、このLEDはパーツボックスに何個か有ったので使ったのだ。パーツは溜め込んでいても役に立たない。積極的にどんどん使う事にした。いつ買ったのか忘れたが、どこかのジャンク屋の福袋に入っていた記憶がある。

 

ほぼ完成したFET & CRD選別冶具(改訂版)の抵抗値を決める

さて、ここまでで可変抵抗を回すとIDを0.5~5mA程度の範囲で可変出来るようになった。

可変抵抗10KAには1KΩの抵抗を付けてロータリースイッチに空中配線した。

固定抵抗はペルケさんの記事では、1.1KΩと記載されていたのだが、手持ちに1.1KΩが無かった。

1Kと100を直列でも良いが、まあ可変抵抗で調整出来るので1KΩにしたのだ。

下図ではその1KΩ抵抗はプリント基板で隠れているが良く見ると見える。

その裏側は下図の通り。

写真 ほぼ完成したFET & CRD選別冶具(改訂版)シャーシ内部

ほぼ完成したのだが、三種類の抵抗R1, R2, R3の選定、取り付け、そしてロータリースイッチで切り替える部分は未完成だ。

ワテの場合は1段1回路12接点のロータリースイッチを使った。12接点もあるので、固定抵抗はR1~R5までの五種類を取り付ける事にした。

 

IDが0.5mA, 0.75mA, 1.0mA, 2.0mA, 3.0mAになるように抵抗値を決める

可変抵抗機能が動くようになったので早速2SK117などのFETを取り付けてIDと抵抗値の関係を調べた。

その測定結果は下表の通り。

ID[mA] (注)

抵抗値[kΩ] 抵抗名
0.5 10.5 R1
0.75 6.94 R2
1 5.16 R3
2 2.597 R4
3 1.696 R5
4 1.291  
5 1.029  

表 IDと抵抗値の実測値

注: 100Ω両端電圧[V]/100 で求める

 

この計測では、ボリュームで目的のIDになるように調整する。その時の抵抗値をテスターで計測する。

それを0.5, 0.75, ・・・, 5.0mAの各電流値に対して行った。なのでテスターが二台あれば便利だが一台しか持っていないとDCVレンジと抵抗測定レンジを頻繁に切り替える必要がある。

今ならテスターなんて1000円ちょいで買えるから、2台くらい持っておくと作業が捗る。

 

さて、ここからがややこしい。

可変抵抗で得られた抵抗値を固定抵抗で実現する必要がある。

例えばロータリースイッチを0.5mAのモードにした時に、本当に0.5mAのドレイン電流が流れるようにする為には、上記の測定結果から10.5KΩの抵抗が必要になる。

まあ、そんな抵抗は手持ちには無いので、二個くらいの抵抗を直列あるいは並列接続で10.5KΩになるようにする必要がある。

ぺるけさんの製作例でもその手法で目的とする抵抗値を実現している。

ワテも同じ方式でやろうかなあと思ったのだが、結局その方式は中止した。

ワテが採用したのは固定抵抗+半固定抵抗と言う方式だ。

つまりまあ、目的とする電流になるように半固定抵抗で値を調整する作戦だ。まあお手軽だし、ピッタリと目的の電流値(抵抗値)を得られる。

また、仮にトランジスタやダイオード、ツェナーダイオードなどが壊れて交換した場合に、固定抵抗式だとそれらの固定抵抗の値の再設定が必要になるかも知れないが、半固定抵抗方式だと値を調整し直す作業も簡単だ。

半固定抵抗で調整範囲は目的とする抵抗の10%くらいにした

ドレイン電流設定用の抵抗の部分は、図で書くと、こんな感じに直列接続にする。

—–[固定抵抗]—–[半固定抵抗]—–

抵抗名

固定抵抗

[KΩ]

半固定抵抗

[KΩ]

抵抗最大値

[KΩ]

抵抗中央値

[KΩ]

抵抗の目標値

[KΩ]

目標電流値

[mA]

R1 10 1 11 10.5 10.5 0.5
R2 6.49 1 7.5 7 6.94 0.75
R3 4.7 1 5.7 5.2 5.16 1
R4 2.4 0.5 2.9 2.65 2.597 2
R5 1.6 0.2 1.8 1.7 1.696 3

表 目標電流値に設定出来るように固定抵抗と半固定抵抗の値を表のように決めた

表のように固定抵抗値と半固定抵抗値を決めた。6.49KΩと言う固定抵抗は、たまたま手持ちに有ったので使った。64.9はE24系列には無いがE48系列にある値だ。

抵抗目標値は、事前にボリュームを回して各電流に対して測定している抵抗値だ。

抵抗中央値が抵抗目標値にほぼ同じになるように固定抵抗、半固定抵抗の値を選んだ。それによって、20回転半固定抵抗の中央付近(10回転)でちょうど抵抗目標値になる。微調整は両側に10回転の余裕があるのでいい感じに調整出来ると思う。

これらの10個の部品を長方形に切ったプリント基板に即席で半田付けして、下図に示すように取り付けた。

写真 シャーシ裏面の左側に五個の固定抵抗と五個の半固定抵抗を取り付けた

上の写真に示すように、抵抗設定基板を作成して、ロータリースイッチに配線した。

早速動作確認と調整を行う。

五個の半固定抵抗を調整する

まずはロータリースイッチでID電流レンジを切り替える。

例えば1.0mAレンジ位置にする。

その時にS1スイッチは奥に倒しておいてIDx100[V]をテスターで計測する。

計測される電圧が、0.100[V] (=1.0mA x 100=0.001A x 100)になるように半固定抵抗をマイナスドライバーで調整する。

調整範囲は10%くらいに設計したので可変範囲は0.095~0.105[V]くらいか。

20回転の多回転型を採用したので、この0.01[V]の範囲を20で割ると

0.0005[V/回転]

となる。

なのでドライバーで軸を数十度くらい回しても0.0001[V](=0.1mV=100µV)くらいしか変化しないので、超高精度な調整が可能だ。

 

テスターのDCVモードで表示を見ながらドライバーを回してピッタリと0.10000[V]に設定する。

・・・・
0.10001
0.10000
0.99999
・・・・

ワテの場合、ピッタリと1.0000となるとある種の快感がある。

これが

0.10002
0.10001
0.09999
0.09998

なんてなると気になって一週間くらい寝られない。

やっぱり半固定抵抗を使って調整する作戦にしたのは正解だった。ぐっすりと寝られるからだ。

ちなみに、このようにして一旦0.1000V(つまり1.0000mA)に設定したあとで、適当に選んだFET1とFET2をSW5で切り替えてみたが、電圧値は0.1000Vからピクリとも動かない。

完璧や!

まあ、ぺるけさんの設計が完璧で有る事は間違い無い。

そこにワテの独自工夫が1パーセントくらいミックスされただけだが。

 

最近では、多回転型の半固定抵抗も安く売っているので、こんなセットを買っておくと何かと便利だろう。

ワテの場合は、十年くらい前にどこかのジャンク屋でお楽しみ袋(あるいは福袋などとも言う)を300円くらいで買ったらアホみたいに半固定抵抗が沢山入っていた。その多くがBourns社のトリマポテンショメータ 0.5W、25回転、上部調整タイプだったので超ラッキー!計測機器などにも使われる高級品だ。

まだ100個くらいあるかな。

溜め込んでいても勿体ないので、どんどん使う事にしたのだ。

完成したFET & CRD選別冶具(改訂版)を早速使ってみる

完成したFET & CRD選別冶具(改訂版)wareko版の写真

写真 完成したFET & CRD選別冶具(改訂版)wareko版

ゼロプレッシャーソケットには二個のFETを挿入出来る仕様にした。

使い方としては一個ずつFETを計測しても良い。

あるいは、二個同時にFETを摘まんで二個同時にソケットに挿せるなんて器用な人は、常人の二倍の速さでFETの選別が可能だ。そんなやつおらん。

上写真右側にはシャーシ内部に増設した半固定抵抗5個が見える。

その調整用のネジ五個の頭が見えているので、もし必要なら抵抗値を再設定する事が可能だ。抜群のメンテナンス性を実現している。

ロータリースイッチは12接点のものを使っているが、現状では6接点しか使っていない。

  • 0.5~5.5mA (可変抵抗)
  • 0.5mA
  • 0.75
  • 1.0
  • 2.0
  • 3.0

必要なら、以下の電流値

  • 4.0mA
  • 5.0mA
  • 6.0mA
  • 7.0mA
  • 8.0mA
  • 9.0mA

にも対応できるようにさらに6個の半固定抵抗を搭載した基板を増設しても良い。

あるいは、

  • 4.0mA
  • 5.0mA
  • 6.0mA
  • 8.0mA
  • 10.0mA
  • 12.0mA

にするかな。まあそれは将来考えよう。

 

兎に角、事前にパーツの配置を入念にシミュレーションして、操作性抜群の冶具が完成した。

右利き仕様なので、左利きの人は左右反転したデザインにすると良いだろう。

写真 フロントパネルには緑LEDを取り付けた

シャーシ内部のレイアウトは行き当たりばったりであるが、結果的には上の写真の通り、各基板がバランスよく配置されて、基板間の配線もスッキリとした仕上げとなっている(事にする)。

無駄な隙間も無く、見た目もいい感じだ(と言う事にする)。

ワテの場合、どちらかと言うとコンパクトに仕上げるのが好きなのだが、今回の冶具製作に関してもネット上で他の人の作例を見るとスマホくらいのサイズに仕上げている人も居る。

ワテも当初はそれくらい小型にしてみようかなあと思ったのだが、ワテの経験で言うとあまりに小型で軽量だと操作中に冶具が勝手に動いて扱い辛い。

なので、適度に重量があって、適度に大きくて両手で操作し易いくらいの寸法が良いと判断したのだ。その結果、上の写真のサイズとなった。

シャーシサイズは

幅奥高 150 x 90 x 30mm

である。

外部電源の供給

このFET & CRD選別冶具(改訂版)の電源は、リアパネルにあるD-sub15ピンに自作の定電圧電源を差し込んで20VDCを供給する。

つまりD-sub15ピンを抜き差しする事が装置の電源のON-OFFに相当する。

電源がONの状態を視覚的に分るようにフロントパネルには緑色LEDを取り付けてみた。このLEDの電源も自作多出力電源回路から取っている。5VDC出力があるのでその電源を使って緑LEDを発光させている。

 

写真 リアパネルの写真

なお、D-Sub15ピンにはDC5V, DC15Vx2, DC20Vx2が来ているので両電源のオペアンプを使った回路を動作させる場合もお手軽に電源を供給できる。

テスターピンを差し込めるテストジャックはこの手の自作機器を作成する時に使うと便利だ。

上図のように電圧を計測したり、あるいは電流を計測する場合などに手軽にテスター棒を差し込める。

二つのFETの切り替えスイッチ(S5)は便利だ

写真 S5スイッチで二つのFETを切り替えて測定中の例

今回はぺるけさんのオリジナル設計の回路をワテ流に少し変更してみた。

具体的には二つのトグルスイッチ(S4, S5)の追加だ。

  • S4 ON-OFF-(ON)の2極トグルスイッチ。測定開始、停止用スイッチ。
  • S5 被測定対象となるFET1, FET2の切り替え(ON-OFF-ON)。

だ。

上の写真のように実際に二個のFETをゼロプレッシャーソケットに挿して、S3ロータリースイッチでID=1.0mAの定電流モードにして、VGSの計測を行った。

この状態でS5を切り替えると測定対象となるFETを瞬時にFET1とFET2間で切り替えられる。

このS5スイッチのお陰で、全く同じ条件で二個のFETのVGSやIDSSを計測出来る。

ペアにする予定の2個のFETの特性を最終確認する時に便利だ。S5を切り替えても二つのFETが全く同じ値を示せば、安心してペアに出来るからだ。

FET & CRD選別冶具(改訂版)wareko版の実体配線図の紹介

まあ、ワテが作ったようなFET & CRD選別冶具(改訂版)を作ってみたいと言うような奇特な人の為に、実体配線図を書いてみた。

クリックで拡大する。

 

図 FET & CRD選別冶具(改訂版)wareko版の実体配線図(シャーシ裏側から見た図)

注意事項としては、上図はシャーシ裏側から見た図だ。

なので、トグルスイッチもボリュームもプリント基板も全て裏から見た図だ。

プリント基板上の部品もプリント基板がもし透明なら透けて見えていると言う意味だ。

トランジスタ2SC1815GRも裏面から見ている。

トグルスイッチはレバーを倒した側とは逆側の端子が中央端子と接続される。

上図は全てのトグルスイッチが上に倒されている。なので、中央接点は下部接点と接続されているのだ。

二番目の注意事項としては、上図はワテのノートに手書きで描いた図面を基にパワーポイントで作成したものだが、ワテ自身はこのパワーポイント図面を見て作成した訳では無い。

ワテは手書きノートの図面を見ながら作成した。

手書き図面をパワーポイントに書き写す時に配線を間違えているかも知れない。

と言う事で、もし皆さんが上図を見ながら作成する場合には、十分に事前に配線を確認して下さい。

三番目の注意事項としては、上図は

D G S G D

となっている間違った配線だ。なのでその部分は、

D G S D G

に修正する必要がある。

FET & CRD選別冶具(改訂版)wareko版の部品表

 

ぺるけさんオリジナル版 ワレコ版
項目 説明 項目 説明
R 2.7KΩ   R 2.7KΩ  
R 100Ω   R 100Ω  
      R1(0.5mA用) 10K + 1KVR  
R1(0.75mA用) 7.40088KΩ 7.5kΩ//560kΩ R2(0.75mA用) 6.49K+ 1KVR  
R2(1.0mA用) 5.54987KΩ 5.6kΩ//620kΩ R3(1.0mA用) 4.7K + 1KVR  
R3(2.0mA用) 2.76134KΩ 5.6kΩ//5.6kΩ//200kΩ R4(2.0mA用) 2.4K + 500VR  
      R5(3.0mA用) 1.6K + 200VR  
           
C 33u 35V 電解コンデンサ(OSコン) 47u 35V 電解コンデンサ  
C 4.7u 50V 電解コンデンサ 10u 16V 電解コンデンサ  
           
D1 1S2076   1S2076A    
D2 1S2076   1S2076A    
ZD 5.6V   ZD 5.6V  
LED     LED緑 DB-1-N-CHG  
      LED赤 DB-1-N-CHR  
TR 2SC1815 GR   TR 2SC1815 GR  
           
S1 2極ON-ON トグルSW S1 2極ON-ON トグルSW
S2 2極ON-ON トグルSW S2 2極ON-ON トグルSW
S3 1回路6接点か? ロータリーSW S3 1回路12接点 ロータリーSW
      S4 2極(ON)-OFF-ON トグルSW
      S5 2極ON-OFF-ON トグルSW
           
電源SW 1極ON-OFF        
DC12V          
           
アルミケース     自作シャーシ    
テストクリップ赤、黒、黄 各1   テスターソケット赤、黒 各1  
リード線赤、黒、黄 各1        
ターミナル赤、黒 各1        
ゴムブッシュ 1        
           
8P平ラグ(8×2=16端子) 1   プリント基板 小型4枚  
      15ピンD-Subオス 1個  
      1ピンコネクタ 7個  
           
           

表 「FET & CRD選別冶具(改訂版)」のパーツリスト

まあ、もし「FET & CRD選別冶具(改訂版)」を自作したい人はこの表を参考にして下さい。

 

まとめ

ぺるけさん設計の「FET & CRD選別冶具(改訂版)」を作成した。

定電流回路の電流値を決める固定抵抗は、半固定抵抗を追加して容易に調整出来る構造にした。

部品代は正確には計算していないが、1000円以下くらいか。ただし、トグルスイッチは新古品、ヤフオク購入品などを使ったので費用を抑える事が出来た。

でもスイッチの中古品はお勧めしない。接点がどんな状態か分からないからだ。

なので、新品をお勧めしたい。

使い勝手は良い

何と言っても定電流回路があるので、一定のドレイン電流を流した状態でFETのVGSを計測できるのが嬉しい。流石にぺるけ先生の設計は素晴らしい。

その結果、多数のFETをVGSに応じて精度よく分類できる。

そしてワテ独自の改良ポイントとしてトグルスイッチのS4とS5の追加だ。

S5を使う事によって二個のFETを全く同じ電気的条件で計測できる。

異なるのは二個のFETを挿している位置のみだ。空間的には数ミリの差なので室温の違い、重力場の違い、地磁気の違いなどは無視できるだろう。

まさに完全同一条件で計測した二つのFETを使って完璧なFETペアを組む事が出来る。一卵性双生児FETペアと言っても良いだろう。

この二つのトグルスイッチの採用は、さすがにぺるけ先生でも思い付かなかったのかも知れないが、そもそもそんなもの必要無いと指摘されたら落ち込む事になるワテである。

自称、電子回路初心者のワテだ。

今後は、時間が有る時にFETのペアを組む予定だ。

2SK30A-GRをIdssで分類した

先日、2SK170-GRのペア組作業と2SK30A-GRのIdss分類作業を行った。

下の写真は2SK30A-GRのIdss分類作業の様子だ。

写真 2SK30A-GRのIdss分類作業の様子(分類する前)

Idss測定モードの場合、赤色発光ダイオードが光るので分かり易い。

写真 2SK30A-GRのIdss分類作業がほぼ完了した

2SK30A-GRのIdssはだいたい2.7mA~4.6mAに分布していた。

最も多かったのは3.1mA~3.9mAくらいかな。

写真 2SK30A-GRのIdss分類作業では、GSを一つのソケットに挿しても良い

新品のTRやFETの場合、三本足の間隔は標準的な2.54mmICピッチよりも狭い。

従って、上の写真のゼロプレッシャーソケットに2SK30AGRを挿す場合に、毎回三本足の間隔を若干広げてやる必要がある。

でも、それが面倒。

で、気づいた。

Idss測定ではGSはショートした状態で測定するので、ソケット挿す時点でGSをショートしておいても問題無いのだ。上の写真はその様子を示す。

こうすると、ソケットにFETを差し込む作業が簡単に出来る。足の間隔を広げる必要が無いからだ。

兎に角、一心不乱に計測したら一時間も掛からずに全部のIdssを計測して分類する事が出来た。

透明なプラスチックケースは100均で見付けた小物整理ケースだ。5x6=30部屋に分かれている。これよりもさらに多くの部屋に分かれている7x8くらいのケースも有ったのだが、5x6で十分だった。

SW5によるFET1とFET2の切り替え機能は物凄く良い

Idssの分類が完了したあとは、同じIdssを持つ2SK30A-GRを幾つか選んで、ペア組をした。Idss=3.1mAくらいのやつを選んだ。

その中から適当に二個の2SK30A-GRを選んでFET1とFET2のソケットに挿す。ドレイン電流は取り敢えず0.75mAにして、測定モードはVgsにして値を計測。

同じVgsを持つ二つの2SK30A-GRを選ぶ事が出来た。その結果、Idssも同じ、Vgsも同じなので、理想的なペアだと思う。

この時に、FET切り替えスイッチSW5が物凄く使い易いと思った。

なぜなら、ペア候補の二つのFETを瞬時に切り替えられるので、手で触ったりする必要もないからVgsの値を完全に同一条件の下で計測できるのだ。

それで、限りなく値が近いVgsを持つ二つの2SK30A-GRペアを取る事が出来たのだ。

今後、Pch用の「FET & CRD選別冶具(改訂版)」を製作する予定なのだが、このトグルスイッチSW5をさらに改良して、ロータリースイッチで四つのFETを切り替えられる方式にしようかなあと思っている。

トランジスタ・FETチェッカー

自作が面倒な人はこう言う製品を買っても良いかも。

ただしぺるけ式ではドレイン電流を可変切り替え出来るが、この製品で出来るかどうかは未確認だ。

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