
気象庁によると近畿地方の今年の梅雨明けは昨日の6/27頃との事だ。
平年と比べ20日前後早く統計史上もっとも早い梅雨明けらしい。
雨が降った印象がほとんど無いのだが。
さて、4月に計画した表題の「金田式AB級80W+80W DCパワーアンプ製作」プロジェクトであるが約三ヶ月でどうにか完成に近づいてきた。
現状では以下の作業が完了している。
- ±55V安定化電源基板 単体で動作確認成功
- ±39V大電流安定化電源基板 単体で動作確認成功
- AB級80Wアンプ基板(左右2枚) ±20Vdc電源供給し単体で動作確認成功
- DC検出&SP保護回路基板 はんだ付け完了
- 木製シャーシ完成
前回記事はこちら⤵️
残す作業はこれらの基板をシャーシに組み込んで配線する作業や動作確認だ。
ただし、AB級80Wアンプ基板に関しては、調整時にドライブ段の電流計測をやり易くした改良基板を前回記事執筆後にPCBWayさんに発注していて、今回その基板が届いたので既に完成している上記アンプ基板を解体して改良基板に改めてはんだ付けする事にした。
それらの基板をシャーシに組み込んで動作確認した結果、途中でいくつかのトラブルも有ったが、最終的にはアンプ自体は正常に動作しているようなので、ほっと一安心と言う所まで来た。
では本題に入ろう。
AB級80Wアンプ基板改良版(Ver. 1.1)がPCBWayさんから到着
PCBWayさんに発注していたAB級80Wアンプ基板改良版(Ver. 1.1)が到着した(下写真)。
![]() |
![]() |
写真 AB級80Wアンプ基板改良版(Ver. 1.1)がPCBWayさんから到着
上写真右において、上段の4種類の基板がAB級80W用、下段の4種類がAB級180W用だ。
金田式風アンプの雰囲気を出すために、サンハヤトのユニバーサル基板っぽい黄色のレジストで発注した。オーディオは見た目が重要だ。
今回はAB級80Wを作っているが、将来的にはAB級180Wも作ってみるかな。
そんな巨大出力パワーアンプを鳴らせる部屋もスピーカーも無いのだが。
アンプ基板Ver. 1.0 をVer. 1.1に交換する
下写真左のはんだ付けが完了している基板がAB級80Wアンプ基板(Ver. 1.0)だ。隣にある未使用の基板が今回PCBWayさんから到着した改良型アンプ基板Ver. 1.1である。
![]() |
![]() |
はんだ付け済アンプ基板Ver.1.0とVer.1.1基板 | Ver.1.0解体部品をVer.1.1基板にはんだ付け前 |
写真 AB級80アンプ基板(Ver.1.1)PCBWay製の両面スルーホール基板1.6mm厚
上写真右のように全ての部品を取り外した。
二年ほど前に購入した電動ポンプ式のハンダ除去ツールが無ければこんな作業は出来ない。もっと早く買っておけば良かった。
あとはこれらのパーツを改良型アンプ基板Ver. 1.1にはんだ付けすれば良い。
その作業過程は写真に取り忘れたのだが、完成したアンプ基板の見た目は上写真の旧型アンプ基板Ver. 1.0と殆ど同じである。
アンプ基板Ver. 1.0 とVer. 1.1の違い
下写真がAB級80Wアンプ基板Ver. 1.1の出力パワートランジスタやそのドライブ段に採用した2SC4793(雑誌オリジナルは2SC1161)の辺りの拡大だ。
写真 AB級80Wアンプ基板Ver. 1.1の拡大写真(電流計測機能を追加した場所)
上写真において、「Ic計測」と言うシルク文字があり、その右隣には「100 R29」の文字が確認出来るだろう。
AB級80Wアンプ基板Ver. 1.1では、この100Ω抵抗を取り付けられるようにしたのだ。
ドライブ段のコレクター電流Ic計測をやり易く改良
もう少し詳しく説明すると、AB級80Wアンプ基板は最終調整時には終段パワートランジスタに流れる電流やドライブ段に流れる電流を、二箇所のバイアス回路にあるポテンショメータ(VR3、VR4 各500Ω)を調整して指定値に設定する必要がある。
具体的にはドライブ段は29mA、出力段は0.79Aだ。ここでは計算を簡単にする為にそれぞれ30mAと0.8Aにしておく。
終段パワートランジスタに流れる電流はエミッタ抵抗0.47Ωの両端電圧を測定すれば計測可能だ。
終段はNPN(2SC5200) x 2個、PNP(2SA1943)x2個を使っているので各トランジスタのコレクタ電流が約0.4Aなら合計0.8Aが流れている事になる。
なのでエミッター抵抗0.47Ωの両端電圧は以下の計算で188mV程度になるようにVR3やVR4を調整すれば良い。
一方、ドライブ段2SC4793に流れる電流Icは雑誌記事では、電流計を挿入して計測するか、あるいは100Ω抵抗を一時的に追加してその両端電圧を計測することで求める方法が説明されている。
つまり100Ω抵抗の両端電圧が3Vなら約30mAのIcが流れている事が分かる。
ところが、ワテが設計したパワーアンプ基板Ver. 1.0ではそれらの調整作業に関しては特に何も考慮していなかった。
なので、もしドライブ段電流を計測するならドライブ段のトランジスタ2SC4793_BCEのコレクタと正電源+39Vdcとの間を分断して電流計を入れるか、100Ω抵抗を追加する必要がある。
そうするにはプリント基板にはんだ付けしている2SC4793_BCEのコレクタだけを基板から抜く必要があるが、そんな作業は難しい。かつ、そこに100Ω抵抗を追加するってのは益々難しい。
もし無理やりやると恐らく失敗してグダグダになるだろう。
と言う事で、上写真のように基板を改良してドライブ段電流計測用の100Ω抵抗を取り付けられるようにしたのだ。
調整時には100Ω抵抗の両端電圧が3VになるようにVR3やVR4を調整すればIc=30mAを実現出来る。そのように調整が完了したら、100Ω抵抗はそのまま付けておいて100Ω抵抗の二本のリード線をジャンバー線でショートすれば良いのだ。
と言う事で、旧型アンプ基板Ver. 1.0から改良型アンプ基板Ver. 1.1に部品を移植する作業は完了した。ドライブ段電流Ic計測用の100Ω抵抗もはんだ付けしておいた。
フロントパネルとリアパネルの加工と組み立て
フロントパネルとリアパネルは楡(ニレ)集成材30mm厚を採用している。
ホームセンターで安売りしていたやつを使ってみた。
下写真のようにボアビットを使って穴あけ加工やザグリ加工を施した。楡の木は見た目は硬そうだが加工してみると柔らかい感じでサクサクと切削出来る。このボアビット セットは、安くて沢山入っているのでお勧めだ。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
写真 リアパネル(ニレ集成材30mm厚)の穴あけ加工完了
上写真の黒色パネルもプリント基板で作成している。これらの基板もPCBWayさんに発注したものだ。
プリント基板をシャーシパネルに利用する案は非常に良いアイデアだと思う。なぜなら複雑な形状の穴あけ加工も可能だし、シルク印刷で文字や図形を描く事も出来るからだ。詳細は過去記事を参照下さい。
なお、木製シャーシはフロントパネルとリアパネルにホゾ穴を掘ってあり、底板には下写真のように凸のホゾ加工をしている。
ところが、底板の前後の寸法が1mmほど長かったのでトリマーを使って追加工して1mmほど削った。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
写真 ホゾ寸法を修正する為のトリマー加工とクルミオイル塗装
仕上げにはクルミオイルを塗布しておいた。
下写真のように木製パネルとアルミヒートシンクを組み合わせたアンプシャーシが完成した。
![]() |
![]() |
写真 木製パネルとアルミヒートシンクを組み合わせたアンプシャーシが完成
これでシャーシの加工は完了したので、いよいよアンプ組み立て作業に取り掛かる。
スイッチング電源をシャーシに固定
金田式アンプにスイッチング電源を使うのは邪道だとは思うが、諸般の事情がありスイッチング電源を使うことにした。
どんな事情かと言うと記事指定のタムラ製作所のトロイダルトランスは入手困難だし、オークションなどで代替トランスを入手するのも困難だから。どこかのトランスメーカーに特注すれば良いが費用が掛かるのでプアオーディオ派のワテの選択肢にはそれは無い。
今回採用したスイッチングも正規品を購入すればかなり高価だと思うが、ワテの場合はジャンク品を安く入手していたやつが有ったので使うことにしたのだ。
4つのスイッチング電源を取り付ける。
- 48V(6.3A)のAC-DCコンバーター(+15%で55V出力) x 2台
- 24V(1.3A)のAC-DCコンバーター x 2台
それらを直列接続して以下のようにするのだ。
雑誌オリジナル記事だと、タムラPR-7106Sと言う大型のトロイダルトランスが使われている。
- 0-45Vac(3.5A) x 2回路 ブリッジ整流すると√2を掛けて 約±63Vdc
- 0-60Vac(0.2A) x 2回路 ブリッジ整流すると√2を掛けて 約±85Vdc
オリジナル記事だと±63Vが±39V大電流安定化電源回路の入力なので、ワテが予定している±55V入力だとかなり電圧が低いがまあどうにかなるだろう。
さて、実はこの時点でスイッチングをどのようにシャーシに固定するか考えがまとまっていない。
なるべく工作作業は減らしたいので、ここは安易にタカチの貼り付けボスを使うことにした。サンハヤトからも似たような製品は販売されている。
底板はニレ集成材なので貼り付けボスが剥がれやすいと思う。そこで下写真のように底板に銅箔テープを貼ってみた。
![]() |
![]() |
写真 底板に銅箔テープを貼り付けてスイッチングを二段重ね(貼り付けボス採用)
その銅箔テープの上に4つの貼り付けボスを貼ってスイッチング電源を固定した。下写真のように大型スイッチング電源は二段重ねになっているが、下段のスイッチング電源の四隅のネジ穴にM3x50ミリの六角スペーサーを取り付けて、その上に二段目のスイッチングを固定している。
写真 スイッチングを三段重ねにした
上写真で、小型のスイッチング電源24Vdc(1.3A)は2台横並びに配置して、三段目に取り付けている。白っぽい板はアルミ複合板(3mm厚)を利用している。
無事に四台のスイッチング電源の固定や配線作業が完了したので、48Vdc(6.3A)スイッチング電源のポテンショメータを最大に回して出力を+15%増しの55Vdcに設定した(下写真)。
![]() |
![]() |
写真 48Vdc(6.3A)スイッチング電源2台取り付け完了(出力電圧は+15%増で±55Vdcに設定)
上写真のように銅箔テープを貼ったお陰で貼り付けボスもしっかりと貼り付いている。また、この銅箔テープを電源回路のアースと接続すればシールド効果も期待出来るかもしれない。知らんけど。
下写真のように電源スイッチに白色の1.25sq電線を使って配線した。
![]() |
|
![]() |
![]() |
写真 電源スイッチ、スピーカーコネクタ周りの配線作業完了
上写真でスピーカーケーブルは、リアパネルに取り付けたスピーカーターミナルやNEUTRIKスピコンに接続した。
一方、スピーカーケーブルの反対側はアンプ基板に接続するが、直接はんだ付けするとメンテナンス性が悪くなるので何らかのコネクタ接続式にする予定だ。
±55V安定化電源基板と±39V大電流安定化電源基板の配線作業
スイッチング電源の取り付け作業が完了したので、安定化電源基板を取り付ける。
下写真は±55V安定化電源基板のハンダ面をフラックスクリーナーで掃除している様子を示す。
写真 ±55V安定化電源基板にスプレー式フラックスクリーナーを噴射した
ワテが使っているのはサンハヤト フラックスクリーナーだが、KURE エレクトロニッククリーナーと言うやつもフラックスクリーナーとして使えるようだ。値段も安い。
上写真のようにフラックスクリーナーを噴射したら、乾く前に歯ブラシなどで擦るとフラックスが溶ける。この作業を数回繰り返して溶けたフラックスを洗い流せば良い。
他のアンプ基板などもフラックスクリーニングをやるつもりだったのだが、クリーニング作業は結構面倒臭いので、中止した。まあ多少のフラックスが残っていても実用上は問題無いし。
ただし、調整時に基板上のハンダにテスター棒を当ててもフラックスが絶縁体となって導通しない場合があるので要注意だ。実際、このあとで紹介する調整作業でフラックスが原因で少しトラブった。詳細は後述。
下写真のようにアンプの電圧増幅段に使う±55V安定化電源基板をアルミ複合板に固定した。
二個のモールド型パワートランジスタ(2SC4793_BCE/2SA1837_BCE)もアルミ複合板に固定したが、実際には発熱は殆どしないのでアルミ複合板などのヒートシンクに固定しなくても問題は無いと思う。
下写真のようにスイッチング電源周りの配線作業が完了したのでメイン電源スイッチをオン。
![]() |
![]() |
写真 四台のスイッチングを直列接続する為の配線作業完了し電源ON
自作電子機器に電源を投入して調整作業を行う時には下写真のように安全ゴーグルは必須だ。
いきなり電解コンデンサが爆発するかも知れないからだ。
![]() |
![]() |
写真 電子機器の調整作業中は安全ゴーグルは必須
下写真のように±55V安定化電源基板の入力電圧は±79Vdc、出力電圧は±55Vdcに設定出来た。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
写真 ±55V安定化電源基板に±79Vdcを入力し、出力を±55Vdcに設定できた
次は±39V大電流安定化電源基板の配線だ。
下写真のようにアルミ複合板をもう一枚追加して、最上部(4階)に±39V大電流安定化電源基板とDC検出&SP保護回路基板を貼り付けボスで固定した。
写真 ±39V大電流安定化電源基板とDC検出&SP保護回路基板を貼り付けボスで固定
上写真でパワートランジスタはアルミLアングルに固定して、アルミLアングルはアルミ複合板に固定しているのでヒートシンクも兼ねている。でも放熱板の面積的にはこれでは足りないと思うので、追加のヒートシンクをアルミLアングルに貼り付けるなどして表面積を増やす予定だ。
アンプシャーシの横幅をもう数センチ増やせばそれらの作業がやり易いが、今からそれは難しい。なので、±39V大電流電源基板のパワートランジスタの放熱対策は組み立てながら最適解を求めたい。と言うことで行き当たりばったりやがなw
ブースト型の±39V大電流安定化電源基板にはスイッチング電源からの±55Vdc(6.3A)を入力するだけでなく、それとは別に±55V安定化電源基板の出力電圧±55Vdcも供給する。ブースト電圧だ。
±55V安定化電源基板は3階部分に配置しているので、下写真のように4階部分にΦ10の穴を二個開けた。その穴に電線を通して±55Vを配線するのだ。
![]() |
![]() |
写真 電線保護用パーツを3D印刷して基板に接着した
上写真でアルミ複合板に開けたΦ10穴に電線保護用のグロメットゴムを付けたかったが、そんな都合の良いパーツは手持ちに無い。なので急遽Fusion360で設計して3Dプリンタで印刷したパーツを接着した。
下写真のように±55Vdcを青赤ケーブルを穴を通して3階から4階に配線した。メンテナンスを優先してELコネクタで分離可能としている。
写真 3階の±55V電源基板出力電圧を4階の±39V大電流基板へ供給する赤黒ケーブル配線
ワテ自身もこんな構造にするとは考えていなかった。組み立てながら考えている感じ。まあ自作ってのはそう言う作業が楽しいのだ。
このあと、電源ONして±39V大電流安定化電源基板の動作確認をしたが、正常に動作した。前回記事の時点でも高砂製作所の可変安定化電源出力を入力して動作確認は出来ているので、この辺りの作業は順調だ。
ところが、以下で問題が発生した。
DC検出&SP保護回路基板を接続する
接続ケーブルを自作する
±39V大電流安定化電源基板には、雑誌記事ではDC検出&SP保護回路機能も実装されている。
一方、ワテの場合にはDC検出&SP保護回路は別基板に分離した。
なので両者を接続するケーブルを自作した。XH7ピンを両端に付けたフラットケーブルだ。
![]() |
![]() |
写真 ±39V大電流安定化電源基板とDC検出&SP保護回路基板の接続ケーブル自作
下写真のように接続ケーブルが目立たないように、±39V大電流安定化電源基板側のXH7ピンオスコネクターは基板背面に取り付けている。
![]() |
写真 ±39V大電流安定化電源基板側のXH7コネクタは基板背面に取り付けている
DC検出&SP保護回路基板を接続するといきなり保護回路が働く問題発生
あとは、DC検出&SP保護回路基板が動作した場合に点灯する赤LEDへの配線も済ませた。この赤LEDは単なる表示用だけでなく、保護回路を動作させる為に必要な回路の一部になっているので、動作確認をするには赤LEDも配線しておく必要がある。これは前回自作したA級15Wアンプ調整時に気づいた。
DC検出&SP保護回路基板からリセットSWや左右アンプ基板Out端子への配線はこの時点では行っていない。
さて、準備が整ったのでPower ONしたら行き成り赤LEDが点灯するぞ。あちゃ~。
![]() |
![]() |
写真 左:赤LEDへの配線完了、右:電源ONで行き成り赤LED点灯。あかん。
まだアンプ基板は取り付けていないし、±39V大電流安定化電源基板は単体テストでは正常動作している。ところが自作XH7ケーブルでDC検出&SP保護回路基板と接続すると行き成り赤LEDが光る。
おかしいなあ。
XH7ケーブルの接続ミスを再確認したが問題はない。
一つ気になるのはこのAB級80WパワーアンプのDC検出&SP保護回路基板は他のAB級120W, AB級180W, A級15Wなどと比べて2箇所の抵抗値が異なっているのだ。
具体的にはSN7400Nの4つのNAND回路のうち2番NANDの入力部はAB級80Wは6.8Kと6.8Kの分圧で与えられているが、他のアンプは全て4.7Kと6.8Kの分圧で与えられている。
もう一箇所は、1番NANDの入力部に直列に入っている抵抗がAB級80Wは680Ωだが、他のアンプは全て220Ωだ。
後者の220Ωや680Ωは回路の動作にあまり関係は無さそうなので、まずは前者の6.8Kを他と同じく4.7Kに変更してみた。
写真 DC検出&SP保護回路基板の分圧抵抗6.8Kを他のアンプと同じ4.7Kに変更してみる
ところが問題は解決せず、Power ONで行き成り赤LEDが点灯。
なので、後者の680Ωも220Ωに変更してみたが、解決せず。
このDC検出&SP保護回路基板は以前にレストアしたA級15Wパワーアンプ製作時に設計したものだ。A級15Wはこの2年ほど使っているが非常に安定して動作している。トラブルは一度も無い。その回路基板データを流用してAB級80W用のDC検出&SP保護回路基板を作ったので回路や基板配線に間違いは無いはずだ。
と言うわけで、お先真っ暗。
こんな時にはブラックコーヒーと甘い羊羹でリラックス。
交換した二個の抵抗は雑誌指定の値に戻しておいた。でもなぜこれら2個の抵抗値がAB級80Wのみ他のアンプと異なるのかは未確認だ。
SN74HC00NはSN7400Nを代替出来ない
少し休憩していたら閃いた!
ワテが使ったのはCMOS版のSN74HC00Nだ。一方、雑誌記事で指定されていのはTTL版のSN7400Nなのだ。
写真 ワテが使ったCMOS版SN74HC00Nと雑誌記事指定のTTL版のSN7400N
そこで手持ちのSN7400Nを探したが自宅在庫が無い。でもA級15WパワーアンプではSN7400Nを使っているのでそれをICソケットから引き抜いてAB級80Wに挿しているSN74HC00Nと交換してみた。
その結果、電源ONしても赤LEDは点灯せずに正常動作。ああそう言うことか!
ちなみに、SN74HCT00Nを使っても同様にいきなり保護回路が動作(赤LED点灯)する問題が発生した。
なのでSN7400NをAliExpressで発注しておいた。
と言う事で±39V大電流安定化電源基板とDC検出&SP保護回路基板を接続しても、下写真のように正常に±39Vが出力されるようになった。
![]() |
![]() |
写真 ±39V大電流安定化電源基板が正常動作するようになった
これで±39V大電流安定化電源回路や保護回路は正常動作するようになったと思ったのだが、まだ問題が隠れていた。
リセットすると-39Vではなく-53Vが出力される問題発生
電源スイッチONすると行き成り保護回路が動作する問題は、SN74HC00NをSN7400Nに交換する事で無事に解決した。
ところが、保護回路が働いた場合にリセットスイッチを押すと正常にリセットされて赤色LEDは消えるのだが、何故か±39V大電流安定化電源基板の出力電圧が±39Vではなく負側の出力電圧が-53Vと言う値になるのだ。正側は正常に+39Vが出力される。
実際、下写真左のようにSN7400Nの2番ピンを金属の棒で触ると保護回路が働き下写真右のように赤色LEDが点灯する。
![]() |
![]() |
写真 左:7400Nの2番ピンを金属棒で触ると保護回路を動作させられる(赤LED点灯)
ここでリアパネルに取り付けたリセットスイッチを押下すると下写真左のように赤色LEDは消灯するのだが、±39V大電流安定化電源基板の -39V出力がなぜか -53Vになるのだ。
![]() |
![]() |
写真 リセットスイッチ押下で赤色LED消灯するが-39V出力がなぜか-53Vになる問題あり
もし保護回路が働いて赤色LEDが点灯した場合に、リセットスイッチを押すのではなくて、電源SWをOFF→ONすればこの問題は起こらない。
なので、そう言う運用をすれば実用上は問題は無いのだが、でもなぜこんな症状が起こるのか気になる。
で、しばらく調査した結果、±39V大電流安定化電源基板の非安定入力電圧が低い事が原因であることが判明した。
雑誌記事では、タムラトランス PR-7106S と言うのが使われている。
2次電圧は以下の通り。
0-60Vac(0.2A) x 2
この45Vac/3.5Aをブリッジ整流すると√2を掛けて63.63Vdcくらい。
ブリッジダイオード2個分の電圧降下約1.4Vを引くと基板入力電圧は62.23Vdcくらいになる計算だ。
一方、ワテが採用した48V(6.3A)スイッチング電源はポテンショメータを最大に回して+15%増しにして約55Vdc。
その±55Vdcを±39V大電流安定化電源基板の入力に入れている。
なので本来±62Vのところを±55Vなので約7V足りないのだ。
そこで出力電圧±39Vを基板上のポテンショメータを回して±30Vくらいに低めに設定してみて、再現実験をしてみた。
その結果、±30Vならリセット後に負側出力が-53Vになる問題は起こらない。でも±30Vだと低すぎるのでもう少し上げて±36Vにしてみたが、この場合も-53V問題は起こらなかった。±37Vだと-53V問題が出る。
と言う事で±39V大電流電源基板は出力電圧を±36Vに設定して使うことにしたのだ。あるいは安全を見て±35Vくらいにする可能性もある。
写真 ±39V大電流安定化電源の出力電圧±39Vを±36Vに変更したら-53V問題解決
なお、上写真でDC検出&SP保護回路基板のアンプOutへの接続端子(LchとRch)は赤黒ジャンパーワイヤーを使って電源のGNDに接続している。
これは自作XH7コネクタで±39V大電流安定化電源基板とDC検出&SP保護回路基板を接続すると電源ONでいきなり保護回路が働く問題調査の過程で、保護回路が働く原因がアンプOut端子とDC検出基板とをまだ接続していないのが原因なのかなあと疑い、念の為にGNDに接続しておいたのだ。でも結果的には、この部分はGNDに落としても落とさなくても問題は再現し、結局はSN74HC00NをSN7400Nに交換して解決した。
と言う事で2つ目の問題も無事に解決出来た。
6ピンELコネクタを使って電源配線を行う
LchとRchのアンプ基板と±55V安定化電源基板や±39V大電流安定化電源基板(実際は±36Vだが混乱を避けるために±39Vと呼ぶ事にする)との接続を行う。
![]() |
![]() |
![]() |
写真 電源とアンプ基板を接続する為のELコネクタ6ピン(2×3)を採用
今回設計した基板の大きめのスルーホールパッド(電源配線やアンプSP出力、GNDなど)は、ランド径Φ3mm、スルーホール穴径Φ1.5mmにしている。これなら0.75SQ電線は問題なく挿し込めるが1.25SQを挿し込むのは非常に難しい。挿し込んでも銅撚り線が2~3本くらい穴に入らずにヒゲのように飛び出す。
上写真右の白(-39V)、緑(GND)、黄(+39V)のはんだ付け前の電線は白、黄が0.75SQで緑が1.25SQだ。緑も0.75SQを予定していたのだが、手持ちに無いし近所のホームセンターにも売っていなかったので仕方なく1.25SQを採用した。
でもΦ1.5穴に1.25SQを挿し込んでも銅撚り線のヒゲが出るので、ヒゲを出さないように超慎重に挿し込んだら無事に挿し込めてはんだ付け完了した。ワテの場合、自分で言うのも何だが物凄く手先が器用だ。神の手を持つと言われている電子工作界のマラドーナだ。ほんまかいな。
と言う事で、下写真のように電源配線にはELコネクタ6ピンを採用して、分解しやすい構造にしたのだ。
![]() |
![]() |
写真 ELコネクタ6ピンはアンプ基板へ電源供給用
上写真右で、±55安定化電源基板の出力ハンダパッドは-55V, GND, +55V ともに三個ずつ配置している。左右アンプ基板への接続用や±39V基板へのブースト電圧配線用だ。他の基板に関しても、なるべく多めのハンダパッドを配置して、配線作業をやり易くしているのだ。そこまで緻密に計算して基板を設計しているのだ。
電源配線ケーブルの色は以下のように割り当てているが、ワテ標準なので業界標準などでない事は言うまでも無い。
0.75SQケーブル | 安定化電源基板出力 | 0.75SQケーブル | 大電流安定化電源基板出力 |
赤 | +55V | 黄 | -39V(-36Vで運用予定) |
黒 | GND | 緑(1.25SQ採用) | GND |
青 | -55V | 白 | +39V(+36Vで運用予定) |
表 電源配線ケーブルの色と電圧の関係
下写真のようにスピーカーケーブル(1.25SQ)も2ピンELコネクタオスを採用した。なのでアンプ基板側にはELコネクタ2ピンメスを取り付けた。
![]() |
![]() |
写真 スピーカーケーブルや入力ケーブルもコネクタ脱着式とした
一方、アンプ入力部のRCAジャックも上写真のように赤黒ケーブルのコネクタ式とした。
純正金田式ならここはモガミ電線のNEGLEXとか言う太いシールド線を使うと思うが、今回は安易に赤黒ケーブルを採用した。
その理由はAliExpressで安く売っていたケーブル付きのJST日本圧着端子製造のSMコネクタが便利そうだったのでオス・メス10ペアを2セット、合計20ペアを買ったから。値段は送料込みで500円ほどかな。でも多分JST純正品では無くJST互換品だとは思うが。
ELコネクタもSMコネクタもケーブル対ケーブルのコネクタだ。最近のワテはこのコネクタをよく使う。
今回のアンプ製作では電源スイッチの緑LED、保護回路赤色LED配線、保護回路リセットプッシュボタンスイッチも全てこの赤黒ケーブル付きSMコネクタで配線したので作業が楽ちんだった。
ELコネクタのオスメスを間違えたが無事に修正できた
アンプ基板にもELコネクタ6ピンを取り付け完了した。
あとは電源ELコネクタとアンプ基板ELコネクタを嵌合して実験開始!と思ったら、下写真のようにELコネクタ6ピンで供給している±55V、±39V、GNDなどの配線でオスピンを圧着すべき箇所にメスピンを圧着してしまっている失敗を発見。あかんがな。電子工作界のうっかり八兵衛と呼ばれているワテである。
![]() |
![]() |
写真 ELコネクタ6ピンでオスピンやメスピンが混在する失敗と、精密ドライバーで引き抜き成功
この手のコネクタに電極ピンを挿し込むと引き抜くのは困難だ。ELコネクタの場合はJST製(日本圧着端子製造)なのでJSTのサイトを確認したら、専用の引き抜き工具を使えばピンを引き抜く事が可能のようだ。でも値段が1万円近いし。
あちゃ~、どないしょ~。
で、ELコネクタや電極ピンの構造を確認した所、ELコネクタに挿し込んだ電極ピンは二箇所の羽根が広がって抜け防止機構が働いている事が判明した。専用引き抜き工具は先端が金属製の筒状になっていて、電極ピンに挿し込むと広がっている二箇所の羽根を閉じる事でスムーズに引き抜く事が出来るのだ。
で、手頃な金属パイプが無いかなあ?と探したが、都合よくそんなぴったりサイズの金属筒が自宅に有る訳がない。
なので、精密ドライバー(マイナス)の細いタイプを使って二箇所の羽根を一つずつ押さえて羽根を閉じるようにしながら、かつ、その電極ピンに圧着している電線を引っ張った。本当なら二本のマイナスドライバーで二箇所の羽根を同時に押さえて閉じれば簡単に電極ピンが引き抜けるが、そんな器用な作業は出来ないので、一つずつ羽根を押さえて引っ張ったら最初は悪戦苦闘したが慣れてくると案外簡単に引き抜けた。やはり神の手を持つワテである。
でも多分、下写真のような安い外国製のピン抜き工具を持っていれば簡単に抜くことが出来たと思う。
このセットは安いし一つ買っておくかな。
と言う事でELコネクタの電極ピンのオスメス間違いも修正して、下写真のように左右アンプ基板、中央の電源基板などの接続が全て完了したのだ。
写真 AB級80W+80Wパワーアンプのアンプ部と電源部の配線が完了
上写真のように非常にスッキリとした配線に出来た(自画自賛)。かつ必要ならコネクタを外れせば左右アンプ部と中央電源部は完全分離可能だ。このように完璧なメンテナンス性を実現している。自画自賛にも程がある。
これでいよいよ電源をONしてアンプの調整作業や動作確認が出来る。
AB級80Wパワーアンプの動作確認
右チャンネルは正常動作
まずは右チャンネルのみ電源接続してPower ON。
アンプ基板自体は以前に高砂製作所の可変安定化電源で±20V程度を与えて単体動作確認は完了している。つまり、本来±55V、±39Vを与えるべきところを±20Vを与えて正常に入力信号を増幅して出力されている事までは確認済だ。
まず、電源をONしてアンプ出力部のオフセット電圧をVR1(50Ω)を調整して約0Vに設定。
次に、差動2段目PNPトランジスタ2SA1358_ECBペア(TR5, TR6)の共通エミッター側にあるVR2(50Ω)を回してTR5(負荷抵抗6.8K/1Wが入っている側)のコレクター電圧も0V付近に設定出来た。
次に、2つのバイアス回路にあるVR3とVR4(各500Ω)を回して、ドライブ段TR9(2SC4793_BCE)コレクタと+39V電源との間に追加したIc計測用100Ω抵抗の両端電圧を約3V(Ic=30mA)に設定すると同時に、出力段パワートランジスタ2SC5200のエミッタ抵抗0.47Ω両端電圧が約188mV(Ic=188mV/0.47Ω=0.4A)になるように調整に成功。
ここまでは順調に作業が進んでいるように説明しているが、実は上記の調整作業で最初は訳わからない状況に陥った。
例えばテスターで出力段パワートランジスタのエミッタ抵抗0.47Ωの両端電圧を計測しても値が不安定でまともに計測出来ない。
あるいは他の箇所の電圧を計測しても計測値が安定しない。
ワテは2台のデジタルテスターを使っている。一つはFLUKEのやつでもう一つはAmazonで購入した無名の会社の安っすいクランプメーター式の製品だ。
当初はこの無名のデジタルテスターが壊れているのか?などと疑ったのだが、同じ箇所をFLUKEで計測しても同じく不安定。
で、しばらく試行錯誤して気付いたのは、原因ははんだ付け箇所に付着しているフラックスが絶縁膜となっていたのだ。その結果、テスターリードのフックをパーツのリード線に引っ掛けても、接触不良で電圧計測が不安定になり値がコロコロと変動していたのだ。
やはりフラックスは綺麗に除去しておくべきだったかな。まあいい。原因が分かったので。
と言う事で、右チャンネルは正常に調整作業が完了した。
そこで右チャンネルアンプ基板に2VP-Pの10KHz方形波を入れて出力波形をオシロ観察した(下写真)。
![]() |
![]() |
写真 右チャンネルアンプ基板の10KHz方形波応答をオシロで観察(下:入力、上:出力)
その結果、上写真のようにまあまあいい感じの波形が観察出来た。
ただし一つ気になるのは、出力波形の所々に白い点がある。立ち上がりや立下がりの部分にある白い点だ。波形の水平部分の輝線が明るすぎるので水平部分の様子は上写真では分からないが、実際には水平部分にも白い点があるのだ。
う~ん、これはスイッチング電源由来のノイズなのかな?
気になるが、取り敢えず次に進もう。
左チャンネルはいきなり保護回路が反応
右チャンネルが簡単に動作確認に成功したので左チャンネルも楽勝だ!と思ったら、そうは問屋が卸さない。
左チャンネルの場合には、電源ONした直後に行き成り保護回路が働いて±39V大電流安定化電源が遮断すると同時にフロントパネルの赤色LEDが点灯する(下写真)。
![]() |
![]() |
写真 左チャンネルは電源ON直後に保護回路が働き赤色LEDが点灯する
リセットボタンを押しても解除出来ない。
あかんがな。
なんでやねん。
トランジスタの不良をチェックする
以前にアンプ基板単体を高砂製作所の可変安定化電源で±20Vを供給して動作確認した時には、正常動作していた。
右チャンネル基板は先程の実験で正常動作は確認出来た。同じように作った左チャンネル基板が行き成り動作不良。
なんでかな~?
今までの作業で基板の部品がショート事故を起こしたような痕跡も爆発音も無いし。
う~ん、分からん。
そう言う場合には、まずはお経のYouTube動画を見て心を落ち着かせる。
ワテのお気に入りお経の一つがこれだ⤵️
ワテの場合、何らかの作業に集中している場合にはラジオも聴かず、音楽も聴かず、お経や自然の川のせせらぎ動画などを見る事が多い。
何度も確認しているので抵抗値を間違えている可能性は有り得ないと思うが、念の為にテスターで抵抗値を再計測した。
基板にはんだ付けしている抵抗の抵抗値を計測しても、カラーコード通りの値が計測されるとは限らないが、回路図を見ながら予測される測定値と実測値を比べながら全部の抵抗を計測したが間違いは無い。
次にトランジスタの故障や不良を疑った。
アンプ基板に電源を印加した動作状態で各トランジスタのベース-エミッタ間電圧(VBE)を計測して、シリコントランジスタなら約0.7V程度の順方向電圧で有れば正常だと判定出来る。
でも、どこか故障しているかも知れない基板に電源を加えてテストするのは危険性が高い。故障がますます広範囲に及ぶ危険性があるからだ。
と言う事で、電源は加えずに各トランジスタのPN接合の順方向電圧をテスターのダイオード計測モードで計測してみた。
その結果、ドライブ段2SA1837_BCE(2SA653の代替)のC-B間がダイオード特性を示さずにショートしているぞ!
写真 ドライブ段2SA1837_BCE(2SA653の代替)のE-B間は正常にダイオード特性を示した
正常なトランジスタならPN接合をダイオード測定モードで測れば0.7V前後の値を示す。でも上写真のドライブ段2SA1837_BCEのC-B間がショートしている。
ハンダ不良(ブリッジ)を発見
基板を裏返してはんだ付け部分を確認したら、下写真のようにハンダブリッジが出来ているがな。
写真 ドライブ段2SA1837_BCE(2SA653の代替)のC-B間がハンダブリッジでショート
どうやらワテがあとからハンダを足した時に、雑なはんだ付けをしたようだ。
と言う事で再はんだ付けしてショートを解消した結果、無事にアンプ左チャンネルも正常動作し、行き成り保護回路が働く問題も解消した。
このあと、出力オフセット電圧0V調整、TR5コレクタ電圧0V調整、ドライブ段Ic=29mA、出力SEPPの各パワートランジスタのIc=0.4A(全体で0.79A)調整など行った。
なお注意事項としてはダイオード測定モードでトランジスタを調査する場合にも、別の素子(例えば抵抗など)が並列に接続されていると0.7V程度の値よりも低い値を示す場合もある。
それと、もし回路中にタンタルコンデンサがある場合には逆電圧を掛けると故障するので、ダイオード測定モードを使う場合は要注意だ。赤色テスト棒がプラス、黒色テスト棒がマイナスだ。何ボルトくらいの電圧が出力されているのかは知らない。別のテスターを使って電圧を測ってみれば分かるが。
更に上写真で分かるように、はんだ付け箇所には大量のフラックスが付着している。フラックスの膜が絶縁体になりテスター棒を当てても接触不良で正しく計測出来ない事があるので要注意だ。
±39V大電流安定化電源基板のパワートランジスタの放熱器サイズの問題
さて左右のアンプ基板が正常動作したのでほっと一安心だ。
ところが、これらの作業を行っている時になんだか焦げ臭い匂いがする。
もしや何かの部品が燃えたのか?と焦って直ちに電源をOFFした。
幸い、燃えた部品は無かった。
くさい臭いの原因は±39V大電流安定化電源基板のパワートランジスタ(2SC5200, 2SA1943各2個合計4個、下写真)が発熱して発していた臭いのようだ。
写真 ±39V大電流安定化電源基板のパワートランジスタの放熱器が小さい
パワートランジスタの表面を手で触ってみると、かなり熱いので恐らく60度から70度くらいの発熱だと思う。
上写真のようにアルミLアングルを15cmくらいにカットして自作した放熱器なのでサイズが小さ過ぎる。このアルミLアングルは取り敢えずパワートランジスタを固定する目的で採用したので、放熱器としての性能は足りないのは分かっていた。
なので、発熱対策は別途行う予定であったのだが、どのようにして表面積を増やすかはこの時点では決めていない。と言うか、良いアイデアが思いつかない。この件はあとで考えよう。
アンプ出力とDC検出&SP保護回路基板を接続するコネクター自作
アンプ基板の出力部分とDC検出&SP保護回路基板とを接続するケーブルも自作した。
![]() |
![]() |
写真 ピンヘッダーを使ってDC検出用接続ケーブルを自作
下写真のようにアンプ基板のOut端子とDC検出回路とを接続した。
![]() |
![]() |
写真 アンプ基板のOut端子とDC検出回路とを接続した
と言う事で、下写真のように無事にAB級80W+80Wパワーアンプの全配線作業が完了した。
写真 無事にAB級80W+80Wパワーアンプの全配線作業が完了した
トランジスタやダイオードの熱結合を行う
まだ幾つかの作業が残っているので、それらも一気にやってしまう。
出力段パワートランジスタとバイアス回路のトランジスタを熱結合
下写真のパワートランジスタはアンプ基板の終段SEPPのトランジスタだ。その間にあるモールド型の小型トランジスタは、バイアス回路に使われているトランジスタだ。
記事では2SC1400_ECBが指定されていたが、そんな古いトランジスタは無いので適当に選んだ2SC1775_ECBで代替している。これも古いトランジスタだが。
その2SC1775_ECBはパワートランジスタと熱結合する必要があるので、下写真右のように高熱伝導性のゴムを上に乗せた。
![]() |
![]() |
そして、下写真のようにFusion360で即席で設計して3Dプリンタで印刷した押さえ部品を使って押さえ込んだ。
![]() |
![]() |
ヒートシンクには予めM3ネジ穴を開けておいたのだ。
![]() |
![]() |
写真 左:Fusion360設計画面と、右:3Dプリント用データ生成
ドライブ段のパワートランジスタとバイアス回路のダイオードを熱結合
熱結合すべき箇所はもう一箇所ある。
それはドライブ段の2SC4793_BCE(2SC1161の代替)や2SA1837_BCE(2SA653の代替)と、シリコンバリスタHV23Gとの熱結合だ。
通常はエポキシ接着剤などで貼り付けるのが一般的だが、ここでもメンテナンス性を重視して貼り付けはやめて、下写真右のように高熱伝導性ゴムでHV23Gを押さえ込んだ。
![]() |
![]() |
そして下写真のように、上から太めの熱収縮チューブを被せて熱風で収縮させて密着させた。
![]() |
![]() |
その結果、上写真右のようにいい感じで熱結合出来た。
実は当初はこの部分も3Dプリンタで印刷した冶具を使って高熱伝導性ゴムを挟み込む作戦を考えたのだが、下写真のように大き過ぎて不格好だし、肝心のゴムを挟み込む機能がうま行かなかったので不採用としたのだ。
![]() |
![]() |
写真 3Dプリントした熱結合用パーツは失敗に終わった
と言うことで、全ての配線作業や細々とした作業が完了した。
動作確認
アンプの動作確認には以前に製作した「ぺるけ式アンプ試験ワークベンチ」を使った。
パルスジェネレータで生成した方形波10KHzや100KHzを入れてアンプ出力信号を計測した。
![]() |
![]() |
Lch 10KHz | Rch 10KHz |
写真 AB級80Wアンプ LchとRchの10KHz方形波応答(上:出力、下:入力2VP-P)
上写真のようにまあまあ綺麗な波形だ。ただし上述した原因不明の明るい点が波形の上に乗っている。
下写真は100KHz方形波応答の観察結果だ。
![]() |
![]() |
Lch 100KHz | Rch 100KHz |
写真 AB級80Wアンプ LchとRchの100KHz方形波応答(上:出力、下:入力2VP-P)
上写真を見ると、この100KHz方形波の入力信号の輝線上に既に明るい点がある。
やはりスイッチング電源由来のノイズなのかな?
±55V安定化電源基板、±39V大電流安定化電源基板の出力電圧をオシロで観察した限りでは、リップルも殆ど無く、謎の点も無いのだが。
ちなみに以前にレストアしたA級15Wの方形波応答を以前に観察した結果は以下の通り。
![]() |
![]() |
写真 Lch 下:入力10KHz(2Vp-p)方形波、上:出力 | 写真 Rch 下:入力100KHz(2Vp-p)、上:出力 |
写真 A級15Wアンプ Lch 10KHzとRch 100KHzの方形波応答(上:出力、下:入力2VP-P)
上写真のA級15Wの場合には、入力方形波も出力波形もノイズらしきものは無く、綺麗な信号に見える。
まとめ

約三ヶ月掛かったが、金田式AB級80W+80Wパワーアンプがほぼ無事に完成した。
当記事は金田式AB級80W+80Wパワーアンプ製作記事の第四回目だ。他の記事は以下の通り。
第1回目 | 金田式AB級80W+80W DCパワーアンプ製作【オールモールドトランジスタ採用】設計編 |
第2回目 | 金田式AB級80W+80W DCパワーアンプ製作【オールモールドトランジスタ採用】製作編 |
第3回目 | 金田式AB級80W+80W DCパワーアンプ製作【電源基板・アンプ基板の動作確認&シャーシ作成】 |
当記事では、木材とアルミ放熱器を組み合わせたシャーシ自作の様子や、スイッチング電源やアンプ基板をシャーシに取り付けて配線する作業、そして肝心の動作確認の様子を紹介した。
途中で幾つかの問題が発生したが、どれも泥沼に嵌まることも無く短時間で解決することが出来た。
AB級80Wアンプ基板に関しては、調整時のドライブ段TRの電流計測をやり易くした改良基板をPCBWayさんに発注して、今回その基板が届いたので既に完成しているアンプ基板を解体して改良基板に改めてはんだ付けした。
その結果、調整作業が非常にやり易くなり、この改良基板を設計して正解だったと思う。
今後の予定としては、以下の2つの作業を検討中だ。
- ±39V大電流安定化電源基板のパワートランジスタの放熱対策
- 方形波応答のオシロ画面で観察される謎の明るい点状のノイズ?の原因究明
放熱対策としては、既存のアルミLアングルに更に別のアルミ板などを貼り付けて表面積を増やす作戦を検討中だ。このAB級80WアンプはSEPP段パワートランジスタのコレクタ電流を0.79Aに調整する。
雑誌「最新オーディオDCアンプ」110ページの式(8)によると、A級動作出力P0Aは次式で与えられる。
つまりA級出力は10Wだ。もう少しコレクタ電流を減らして発熱を抑える作戦も考えたが、やはり放熱器のサイズが小さいので大型化を図るほうが安定性も良いので、その作戦で行く。
ちなみにアンプ基板のパワートランジスタを固定している巨大なアルミヒートシンクはサイズ的には十分過ぎる大きさなので、アンプ基板のパワートランジスタはほぼ室温と変わらないくらい低い温度だ。
やはりヒートシンクは大きければ大きいほど良いと言う事を痛感した。
一方、原因不明の謎の明るい点状ノイズに関してはスイッチング電源由来のノイズの疑いが強い。
なのでコイル(チョークコイルやコモンモードチョークコイルなど)や電解コンデンサを使った平滑回路を追加しようかなあと検討中だ。
(続く)
コメント