写真 平衡差動プリが完成したのでお弟子さんを招いてお茶会&平衡差動プリ試聴会を開く茶道の先生。ほんまかいな?
さて、全三回に分けて紹介しているぺるけ式FET平衡プリ製作記事であるが、これが最終回。
果たして無事に完成するのか?
前回までで、
- 平衡プリアンプ基板半田付け完了したが動作確認は未完
- 疑似正負電源半田付け完了し、動作確認完了
- AKI-DACのコンデンサ増強(クロストーク低減)完了
- ラッチングリレー方式の入力セレクターの動作確認完了
- これらの基板をシャーシに取り付け
が完了した。
残る作業は、
- AC100VからDC24Vを生成する電源回路の作成
- 各基板間の配線
- ボリューム、入力XLR5ピン、入力RCAピンと入力セレクターの配線
- 日本光電ライントランスの取り付け、出力XLR5ピンコネクターへの配線
などである。
では、本題に入ろう。
AC100VからDC24Vを生成する電源回路の作成
ワテの場合は、電源回路にはLM317出力可変正電圧三端子レギュレータを使う事が多い。
まあ簡単だし。
でも今回は気分を変えて、ディスクリート式のレギュレータを作る事にした。
で、自分で設計しても良いのだが、まあ、自称電子回路初心者のワテが設計してもまともに動くと言う保証はない。
なので、有名先生設計の回路に沿って作るほうが成功する確率は高いだろう。
と言う事で、適当にネット検索してみて、このページにある
http://www7b.biglobe.ne.jp/~konton/No-128ka%20RG.gif
金田式超高速PPレギュレーターと言うのを作ってみる事にした。
即席で金田式風超高速PPレギュレーターを作る
手持ちには2SC1815とか2SA1015などの汎用のTRしか無いので、回路図にある金田式指定TRは一つも使わずに、適当に選んだパーツで作ってみた。
事前にLTspiceでシミュレーションしてみたが、一応動きそうな感じ。
なので、金田式純正レギュレーターではなくて、金田式風レギュレーターと言う事になる。
ビールと発泡酒の関係みたいなもんか。
まあ、兎に角作ってみる事にした。
写真 パーツを適当に基板に差し込んで半田で固定する
プリント基板の切れ端に、パーツを適当に差し込む。
事前にノートに手書きしてパーツの配置はある程度は検討済である。
パーツの足を折り曲げるのは後々のメンテナンスでパーツを交換する時などにやり辛いので、上図のように単純に半田付けして、余分な足は全部切り落とした。
写真 パーツの高さを調整するには養生テープがお勧め
養生テープで軽く押さえておくと、基板を裏返してもパーツが抜け落ちる心配が無い。
で、あとは一気に半田付けするが、少量の半田で仮止めする感じ。
パーツの高さが綺麗に揃わない場合もあるので、全部のパーツを仮止めしたら、テープを剥がしてパーツの高さを確認する。
もし高さがずれているパーツが有れば、半田ゴテで半田を溶かして高さ調整する。
パーツの高さがいい感じに調整出来たら、余分な脚はニッパで全部切り落とす。
金田式7本撚り線風の配線
パーツ間の配線は、7本撚り線(適当に銅線を撚って作成)と半田メッキ線(秋月で購入)を使った(下図)。
写真 7本撚り線や半田メッキ線で配線した
秋月の半田メッキ線は使い易い。
写真 秋月で買った半田メッキ線は半田のノリが良いのでお勧めだ
今回、スズメッキ線ではなくて半田メッキ線と言うのを使ってみた。
はんだメッキ線 0.6mm 100g
通販コード P-13310
発売日 2018/05/02
理研電線 HLD-FSS 0.6N 軟質タイプ。こちらはお客様からのご要望により販売開始いたしました。100g巻、約40m
引用元 http://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-13310/
文字通り半田がメッキされているので、その線を半田付けすると、半田の乗りも良くていい感じだ。使い易い。
現状ではΦ0.6しか売っていないのだが、もう少し細いのが有っても良いかも。
もしΦ0.4~0.5くらいなら普通の1/4W抵抗のリード線と同じくらいの太さだ。
Φ0.6だと1/2W抵抗リード線くらいの太さかな。
でもまあΦ0.6くらいの太目のやつのほうがしっかり配線出来ている感じに見えるので、これで十分かな。
なお、Φ0.6の半田メッキ線はΦ0.6の半田と見た目がソックリなので要注意だ。
部品を半田付けしようとしてコテで熱しても半田が溶けないぞ?と思ったら、半田メッキ線を半田だと勘違いしていた!なんて失敗が10回くらいあった。
ミニドリルで7本撚り線を大量生産する
あとは、適当に作成した7本撚り線も併用した。
写真 雑に作った7本撚り線
スピーカーケーブルの数十センチくらいの切れ端が有ったので、その素線を7本取り出して、サンハヤトのミニドリルのチャックに挟む。
ワテが使っているのは、この記事で紹介しているサンハヤトミニドリルD-3と言うやつだ。
同じ様なドリルならこんな感じ。
電源オンするとチャックが回転して7本撚り線が数秒で出来上がる。
ただし、綺麗にらせん状に作るのは難しい。ワテの場合、下手糞なので上の写真のようにデコボコになるが、まあ電線としての機能には問題無いと思うのでそのまま使う。
電流が流せれば問題無いだろう。
注意事項としては、7本の銅線の端をしっかり摘まんでおかないと、ドリルが回転すると銅線が手から離れてブンブン回るので危険だ。目に当たったりすると事故のもとなので、ドリルを使う場合はたとえミニドリルであっても安全ゴーグルの着用をお勧めする。
あるいは、銅線の端っこは万力などで固定しておくと良いだろう。
で、兎に角即席で作成したDC24V電源(下図)。
写真 金田式風超高速PPレギュレーター(DC24V)
入力電圧は非安定DC30V、出力電圧は多回転型ボリュームで24V±2Vくらいは可変出来る。
あと、タンタルコンデンサとか、フィルムコンデンサとか、何年もパーツボックスに溜め込んでいる部品を使ってみた。
と言う事で、即席で作成した金田式風電源はまあ正常に動いている感じ。
もし何か問題が出たら、LM317版に変えてもいいし。
この電源で生成したDV24Vをぺるけ式電源回路に入力したら、無事に疑似正負電源回路が動いた。
と言う事で、DC24V電源回路は完成と言う事にする。
ちなみに、昨年作成したこのレギュレーターの回路とよく似ている。
ぺるけ式正負疑似電源基板を切断する
コンパクトなシャーシ(タカチのOS 49-26-23 BB)を使ったので、ぺるけさんの電源基板を収納する場所が無くなってしまった。
写真 切断前のぺるけ式電源基板とXLR入力の信号減衰抵抗
上の写真のように、この電源基板はもともと右側部分に未使用のエリアが有った。
なので、基板を中央で切断して小型化する事にした。
なお、16個並んでいる24KΩ抵抗は、XLR端子からのバランス入力を減衰させてAKI-DACの出力レベルに合わせるためのものだが、これも取り外した(下図)。
写真 XLR入力の信号減衰抵抗も取り外した
これらの抵抗は入力XLRコネクタの端子に直接取り付ける事にする。
半田吸い取り線は自作派必須
半田除去作業には、こんな道具が有れば便利だ。
でもまあワテの場合には、半田吸い取り線しか持っていないので、ひたすら吸い取る。
切断には丸ノコを使った。
写真 切断したぺるけ式電源基板
ベーク基板とかフェノール基板を切断すると、細かい粉が舞って独特の匂いがするが、ワテは未だにこの匂いが嫌いだ。
で、切断したのだが、それでも設置場所に困ったので、下図のようにL金具で立てる作戦にした。
写真 L金具でぺるけ電源基板を立てる
写真のようなL金具を大小幾つかの種類を持っていると、何かと役に立つ。
また、樹脂製のネジやスペーサーも便利だ。
ぺるけ式電源基板を縦にして配置した
で、隙間に取り付けたぺるけ式電源基板(下写真)。
写真 隙間に取り付けたぺるけ式電源基板
まあ、どうにか隙間に押し込んだ。
過密にも程がある。
この時点で、基板のレイアウトは以下の通り。
写真 この時点での基板のレイアウト
ラッチングリレー式のセレクター基板は余白部分にもう一枚入れる予定だ。
合計5チャンネルの切り替え。
セレクター基板の領域がアンプ基板と同じくらいの大きさになってしまった。
次回同じようなのを作る時には、専用基板を設計してネット注文に挑戦したいと思っている。
後は、各基板間の配線作業だ。
各基板間の配線
プリアンプ基板に電線を半田付けする。
写真 プリアンプ基板に電線を半田付けした状態
左側の電線は、ボリュームから来る信号用。
右側の電線は、ライントランスに行く出力用。
上の黒赤白の三本は疑似正負電源回路へ接続する。
なお、ぺるけさんの作例を調査した結果、電線の色は以下の通り。
- 紫 L-HOT
- 灰 L-COLD
- 茶 R-HOT
- 灰 R-COLD
- 赤 電源 +17.1V
- 黒 GND
- 白 電源 -5.1V
ぺるけさんの配線を見ていると、緑、青、黄、橙などの色はあまり使われていないようだ。
で、この紫、茶、灰、白、黒と言った比較的地味な感じの色が良く使われている。
その結果、シャーシ内部が落ち着いた雰囲気になる。
ちなみにワテの場合は、黄、青、白、緑、橙、水色、赤、黒などの原色系が好きだ。
まあそんな事はどうでも良いが。
プリアンプ基板の半田付けを本仕上げする
プリアンプ基板に電線を半田付けする作業と同時に、今まで仮止め状態であったプリアンプ基板上の各パーツを、十分な半田を盛って本仕上げした。
写真 プリアンプ基板の半田面(仮止め状態)
25Wの半田ごてとΦ1.2の鉛入り半田を使って、各ランドに十分に半田を盛った。
こう言う半田作業はやり易いので気分が良い。
ワテのお勧めは、千住金属 スパークルはんだ 。
短時間にサッと仕上げると、半田の表面に綺麗な光沢が出る。一方、うまくくっ付かないので長時間クネクネやっていると、半田が酸化して光沢の無い汚い仕上がりになる。
ちなみに、ワテの場合は、半田付けは何度やってもあまり上手に仕上がらない。YouTubeに半田付け動画があるのでそれを見て練習してみるかな。
半田ミスを無くすと同時に綺麗に仕上げたいので、実体顕微鏡で観察しながら作業した。
ちなみに、半田付けした後は、フラックス除去剤や無水エタノールを綿棒に付けて綺麗に清掃した。
その後は、基板防湿剤を塗布しておくと完璧だが、ワテの場合は使っていない。
兎に角、プリアンプ基板の半田付けが完了した。サクサクと作業が進んだ。
この後で登場するXLR端子の半田付けとかリレー基板の細かい半田付け作業は物凄くやり辛いのだが。
AKI-DACの出力に付けるフィルター基板を作成した
秋月DAC出力には、ぺるけさん設計のフィルター回路を取り付ける。
写真 LCRフィルタ基板(右側のオレンジ色リレーの左隣りにある)
LCRフィルタ基板の置き場所も狭くて往生したのだが、リレー基板の上に二階建てで固定した。
ボリューム、入力XLR5ピン、入力RCAピンと入力セレクターの配線
4連ボリュームの辺りの配線を行う。
写真 配線用銅線、スペーサー、ネジなどのパーツ(ぺるけさんに頒布お願いした)
上の写真にある銅線を使ってボリュームのアース線を配線する。
ヒートクリップがお勧め
下写真のアルプス四連ボリューム(50KΩA)に銅線を通して半田付けする。グランド線だ。
太い銅線は半田ゴテで熱すると半田付けはやり易いが、熱が冷めにくいのでボリュームの抵抗体にダメージを与える心配がある。
写真 ボリュームの半田付けはアルミクリップで熱を逃がす
その対策として、上写真のようにアルミクリップを挟んでおく。
そうすると、半田付けの熱はアルミクリップに逃げるのでボリューム内部には殆ど伝導しないから安心だ。
グット製のヒートクリップと言う商品だ。
ストレートタイプと折れ曲がりタイプがある。
ワテの場合、ストレート1本、折れ曲がり2本持っている。
あとは、こんな金属製や樹脂製の洗濯バサミも持っていると何かと役に立つ。
例えばリード線を半田付けする場合に手が二本では足りない場合が良くある。
左手でリード線を持って、右手で半田ゴテを持つと、半田を持つ手が足らない。
そんな時に、リード線を洗濯バサミで固定しておけば左手が空くので半田を持てる。
軽く押さえたい場合には樹脂製洗濯バサミ、熱で溶ける恐れがある場合には金属製洗濯バサミを使い分けると良い。
日本光電TD-1ライントランス取り付け、入力XLR5コネクタ配線
中古で入手した二個の日本光電(NIHON KOHDEN ) TD-1 ライントランス(600Ω/150Ω:600Ω/150Ω) は、タカチシャーシのアルミフレームに両面テープで貼り付けた。
本当は、ネジでしっかりとシャーシに固定するほうが良いとは思うのだが、シャーシにボール盤で穴開け加工するのも面倒なので貼り付け作戦にした。
でもトランスのケースをグランドに落としておく方が良いと思うので、ネジ穴を利用して銅線でグランドに接続する予定だ(現状ではケースは浮いた状態)。
仮配線して音出し確認する
プリアンプ基板はまだ動作確認が出来ていない。
なので取り敢えず、AKI-DACの出力をプリアンプ基板に入れて音が出るかどうかテストする事にした。
ラッチングリレーのセレクター基板の配線は後回しにして、AKI-DACのLCRフィルター基板出力の信号をテストクリップ(黄、青)を使ってボリュームに配線した。
写真 仮配線で音出しテストの様子
赤、白はAKI-DACのグランドで、それをLR入力のCOLDに接続(Unbalance)。
一方、出力もUnbalanceにしたいのでライントランス出力をRCA端子に接続して、かつ、グランドをRCAのグランドにも接続してUnbalance化。
その結果、上の写真のように、テストケーブルが入り乱れる状態となった。
ほんまにこれで動くんかいな?
不安がよぎる。
電源入れたら火花が飛ぶかも知れない。
まあ、なるようにしかならないので、兎に角先に進もう。
自作機器の火入れは実験用定電圧電源を使う
ここで行き成り電源を入れると、半田付けミスで回路にショートでもあるとトランジスタが爆発するとか、抵抗が燃えるなどの事故が起こる。
まあ過去に何度もそんな経験をしたワテの場合は、今は慎重に行う。
まず、電源は自作DC24V電源は使わない。
使うのは中古で入手した高砂製作所の定電圧電源だ。
この電源をDC24Vに設定して、ぺるけ式電源基板に電圧を供給する。
そうすると、もし高砂電源の出力をオンした瞬間に、例えば電流が数百mAとか流れたらそれはどこか回路がおかしいので、すぐに出力をオフして原因調査に取り掛かる。高砂電源にはデジタル表示の電流計が付いているので便利だ。
こんな感じ。
ちなみに慎重派のワテは、この電源出力のところにアナログ式の電圧計と電流計を取り付けている。アナログメーターなら針の一瞬の振れで電流が流れた事が分かり易いからだ。
今回は高砂電源をオンしても電流は数十ミリアンペア程度と想定内だったので、回路に致命的なバグは無さそう。
音出し成功
平衡プリアンプのRCA出力を所有しているローランドSRA-50パワーアンプに接続して、スピーカーはJBL Control Xtreme 1を接続した。
パソコンの再生デバイスをUSB-DACに設定する。
その結果、ラジコで聴いていたラジオ音声がスピーカーから出ている!
ボリュームを回すと音量の制御も問題なく出来ているし。
ええ感じや。
左右の極性チェック、位相チェックも正常
このYouTube動画を再生すると、スピーカーの左右チェックと、位相のチェックが可能だ。
テストした結果、配線間違いはない。
と言う事で、プリアンプ基板は正常に動いているようだ。
いい感じだ。
もし音が全く出ないとか、原因不明のノイズが載っているとかだと、お先真っ暗な気分になるが、今回は一発で上手く行った。
こう言う時は、気分が良いよね。
本配線を行う
ぺるけさん設計の平衡プリでは、入力はXLR3ピンメスだ。XLRコネクタはキャノンコネクタとも呼ばれる。
ワテの場合には、XLR5ピンを採用した。
XLR5を使う理由は、穴が一個で左右チャンネルを扱える点が良い。
まあこのNeutrikの3ピンを二個買うのに比べると、この5ピンを一個買う方が高いが。
でもまあそんなに沢山のXLR5を使う訳では無いので、この際、使ってみる事にしたのだ。
XLR5ピンキャノンコネクターの接続は、
- グラウンド
- L-HOT
- L-COLD
- R-HOT
- R-COLD
となる。XLRの規格でそう言う仕様になっているらしい。
写真 信号減衰用の24KΩ抵抗をXLR5ピンに直接半田付けする
元々はぺるけさんのタカス基板に半田付けしていた24KΩ抵抗であるが、それを上写真のようにXLR5コネクターピンに直接半田付けした。
リード線を短く切っているので半田付けが難しかったが、上写真のようにアルミクリップを使って抵抗を固定してやると作業がし易い。
写真 GND(1番ピン)には四本の抵抗リード線とGND線が刺さる
XLRコネクタピンに抵抗のリード線を一本だけ挿すと隙間が多い。
それを半田付けする場合には、半田を数ミリの長さに切ってその隙間に差し込んでおいた。
そうすると、半田ゴテで温めると半田が溶けて穴が埋まるので、短時間で半田付けが終わる。
写真 ほぼ配線が完了したXLR5ピンコネクター
五本もの線が入り乱れるのでショートしないように熱収縮チューブを被せる(上写真)。
かつ、太目の熱収縮チューブをその上から被せて、ショート事故の対策を入念に行った(下写真)。
写真 XLR5ピン(Unbalance)入力部の配線が完了した
もうこんな作業はしたくないって言う感じの細かい作業だ。
リレー基板の配線も5入力のうちのAKI-DAC出力(Unbalance)とXLR5入力(Balance)の2入力の配線を済ませた。残り3ch(RCA x 2, XLR5 x 1)は別途行う予定。
写真 本配線がほぼ完了したぺるけさん設計FET平衡プリアンプVersion2
本来入力用に使う予定のRCA端子を取り敢えず出力端子に利用した(上図)。
Unbalance出力にしたいので、出力信号のCOLDとRCAのグランドをショートしている(赤、青)。
本当なら、こんな変換プラグが有れば良いのだが。
これは
XLR3バランス<=>RCAアンバランス
変換だが、XLR5用のこんな変換プラグは既製品では無さそう。
なので、自作するかな。
本番でも音が出た
さて、数時間掛かりでほぼ配線が完了したので恐る恐る電源スイッチオン。
スピーカーから音が出たのだが、左側から音が出ていない。
あかん、配線の間違いか。
兎に角直ぐに電源スイッチをオフした。
異常を発見した場合は、兎に角電源をオフする。
原因はその後で考える。
電源を入れたままあれこれやっていると必ず失敗する。
抵抗が燃える、トランジスタやFETがチンチンに熱くなり破壊するなどだ。
で、配線を見渡したら、パワーアンプとの接続に使っているRCAケーブルの左チャンネルを未配線のRCAコネクタに挿していた。
なんや、単なる差し間違いか。
で、指し直したら無事に左右のチャンネルから音が出ている。
ええ感じや。
ボリューム14時くらいからハムノイズが聴こえる
でもボリュームを大きくするとブーンって言う感じのハムノイズが聞こえる。
特に左側スピーカーから聞こえるノイズが大きい。
あかんがな。
高砂定電圧電源で鳴らした時には気付かなかったのか、出ていなかったのか、それは分からない。
兎に角、AC100VをトロイダルトランスでAC24Vにして整流してワテ自作のDC24Vレギュレーター基板で鳴らすとブーンが聴こえている。
たぶんトランスが原因かな。
小さなシャーシに過密に詰め込んだし。
シャーシ内部レイアウトでも、トランスは左側にあるのでプリアンプ基板の左チャンネルに近いし。
じゃあ、トランスと基板の間に金属板などを入れて遮蔽すればノイズが減るだろう。
何か手頃な金属板が無いかなあと見渡したら、何かに使おうと思っていたシーチキンの空き缶と蓋がある。
シーチキンで調査開始
その直径数センチの金属蓋をミノムシクリップ付きケーブルで咥えて、ケーブル反対側はシャーシの金属部分を咥えた。
そしてその金属蓋をトランスと基板の隙間に入れてみると左側スピーカーのハム音が小さくなるぞ。
やっぱりトランスが原因のようだ。
それと、AKI-DAC出力に追加したぺるけさん設計LCR式フィルターに使っているコイルがトロイダルトランスに近い。
ぺるけさんのサイトの記事によれば、コイルの向きを変えるだけでも左右チャンネルのクロストークは敏感に変化するとの事だ。
なので、ハムノイズに関してもコイルの向きも関係している可能性が高い。
それでハムノイズの音が大きい左側コイルを試しに少し傾けてみたら、なんと、ハムノイズの音が変化するぞ。
早速本格的に調査した。
まず、セレクターはAKI-DACにしておく。
パソコンではAKI-DACに出力する。
ただし、ボリュームはミュート状態にしておく。
一方、平衡プリアンプのボリュームは最大にする。
その状態でコイルの傾きとノイズの大きさの調査。
直立状態だと少し大き目のハムノイズ。
10度くらい傾けると、ハムノイズが殆ど聞こえない。
20度くらい傾けると、壮大なハムノイズ。
物凄く敏感だ。
で、結局、10度くらいの位置で左チャンネルのハムノイズは殆ど消えた。
同じく右チャンネルのコイルも少し傾けたら、もともとハムノイズは小さかったが、ますます小さく出来た。
と言う事で、ハムノイズ問題はあっけなく解決(その後、シャーシの蓋をすると再びハムノイズ問題が起こるのだが、、、。その辺りも後述)。
ぺるけ式FET平衡プリアンプの音
ワテの駄耳で聴く限り、ぺるけ式FET平衡プリアンプの音は繊細な感じ。
人のニュース音声はハキハキとした感じに聞える。
音楽はナチュラルで、楽器の細かい音も良く聞こえる。
現在プリアンプとして使っている「FET式差動ヘッドホンアンプ Version 3」の音と傾向は似ているが、この平衡プリアンプのほうがより繊細な感じ。
音量を上げても音が潰れずに小気味よく高音が響く。
使っているスピーカーが小型なので低音が出にくい。なので、全部の配線が完成したら大き目のスピーカーでその辺りの音出しテストをしてみたい。
ちなみに今回使ったライントランスはタムラ製作所のものでは無くて、日本光電(NIHON KOHDEN ) TD-1 ライントランス(600Ω/150Ω:600Ω/150Ω) だ。
同じTD-1でもタムラライントランスの音と、日本光電(NIHON KOHDEN ) の音とを聞き比べすると何か違いがあるのかどうか気になるところである。
将来、実験してみたいものだ。
ところで、
日本光電工業株式会社(NIHON KOHDEN CORPORATION)
と
東京光音電波株式会社(TOKYO KO-ON DENPA COMPANY LIMITED)
は全く別の会社だ。
ワテの場合、後者の東京光音は良く知ってる会社だが、前者は時々名前を聞いた事は有ったが、東京光音と混同していた。つまり同じ会社だと思っていた。
でも今回調査してみたところ、日本光電は医用電子機器の会社で有る事が判明した。トランス製造はその中の一つの事業のようだ。
一方、後者の東京光音は放送機器や音響機器、あるいはそれらに使うパーツを作っている会社だ。
アマゾンでも売っているが、かなりの高級品だ。
残る作業
現状では、入出力の配線状況は以下の通り。
- 入力1 USB-AKI-DAC 配線済
- 入力2 XLR5 配線済
- 入力3 RCA 未配線
- 入力4 RCA テスト用にUnbalance出力
- 入力5 XLR5 未配線
- 出力 XLR5 未配線
なので、時間があるときに未配線部分を半田付けしたい。
フロントパネルに文字を入れたいが、インスタントレタリングをやってみるかな。
ちなみにワテはインスタントレタリングをやった事が無い。
まあ自作なので文字が無くてもどのスイッチがどんな機能か自分では分るので実用上は文字が無くても困らないからだ。
でもまあ、今回は見た目も重視したいので、インスタントレタリングに挑戦だ。
あるいはCNCルーターを買って文字を掘るかな。
それとロータリースイッチとボリュームのツマミをどうするか。
今回、これらのパーツはフロントパネルに直接取り付けずに、補助板に取り付けたのでパネルから飛び出す軸の長さが少し短い。
特にアルプス4連ボリュームは軸が短かったので手持ちのツマミの固定イモネジがギリギリ届かないので固定出来ないのだ。
あかんがな。
なので、何か見栄えの良いツマミを購入したい。
ツマミって意外に高いんだよなあ。
旋盤が有れば自分で作りたいのだが。
ほぼ完成
週末を利用して残りの作業を実施した。
5入力のセレクター機能を入れたので、セレクター基板の配線がスパゲッティ状態になってしまった。いや、もり蕎麦状態と言うべきか。
写真 配線がもり蕎麦状態の平衡プリアンプ
まあ、電子工作上級者の人から見れば、こんな入り乱れた配線だと絶対に良い音は出ないと思われるだろう。
ワテもそう思う。でも、ワテのアンプは見てくれは悪いが、
- 信号経路は最短で配線し、
- ノイズ対策としてツイストペアにする、
- グランドループは作らないように心掛ける、
- 一点アース(良し悪しは議論があるようだが)もある程度は意識する
などの基本は守っているつもりだ。
無線と実験とかラジオ技術などで見掛けるアンプ配線では、プロ級の人の手による整然と整理整頓された配線が印象的だ。ワテもやってみたいのだが、現実は難しい。
(でも、上の写真でも完成した後の試聴では、フルボリュームでもノイズも皆無で、通常使う12時くらいのボリューム位置では、無音時には静寂感があり、素晴らしい性能に仕上がったと自画自賛している。と言っても、ぺるけさん設計が素晴らしいのがその理由なのだが。)
上から見るとこんな感じ。
出力 XLR5オス 入力 XLR5メス RCA(L, R) RCA(L, R) XLR5メス USB |
写真 平衡プリアンプの天板を外した状態
USB-DACのコイルがノイズを拾い易いので、角度を傾けて調整したら多少はノイズが減った。
また、念のためにトロイダルトランスを静電シールドするためにアルミで覆った。
効果のほどは分からない。
非磁性体のアルミだと磁気シールドは出来ないと思うので鉄などで覆うべきだったかな。
いずれにしても、音量を大きくするとUSB-DACから若干のハムノイズが聞える。
やっぱり過密に詰め込み過ぎたのが原因だろう。
バランスXLR5-アンバランスRCA変換ケーブルを作成する
写真 バランスXLR5-アンバランスRCA変換ケーブルを作成
取り敢えず試聴したいので、変換ケーブルを作成した。
ワテが使ったのはXLR 5ピンメスだ。
ITTキャノン XLR型メスプラグ(5pin) XLR5-11C
キャノンコネクタは、抜き差しする時に小気味いい音がカチッと鳴ってロックが掛かるので気分がいい。
それに比べるとRCAコネクタの抜き差しの操作性はワテは嫌いだ。
PCオーディオ環境に組み込んで試聴
写真 完成した平衡プリアンプをPCオーディオ環境に組み込んで試聴
ツマミは手持ちに有ったやつを使ったので、ちょっとサイズが大き目。でもまあ、回し易いのでこれくらいデッカイほうが良いかも。
平衡プリアンプに秋月USB-DACを内蔵したが、それとは別に以前作成した同じ秋月USB-DAC単体もある(最上部)。全く同じ物だ。
二つのUSB-DACの出力フィルターは、ぺるけさんにパーツを頒布して頂いて最新型にしている。
その辺りの記事はこちら。
まずは平衡プリアンプ内蔵のUSB-DACで聴いてみる。
音源はラジルとかラジコの音声だ。
いつも聴いているぺるけ式アンプの音がする。
ボリュームを回すと11時くらいからハムノイズが聞こえる。USB-DACの出力部分に取り付けたコイルがトロイダルトランスに違いのが原因だ。
コイルの角度を調整してノイズを減らしたのだが、過密な配線ケーブルがあるのでシャーシの蓋をするとケーブルがコイルに当たって角度が変わるみたいだ。なので、根本解決はコイルを鉄板で覆うとか、あるいは取り付け場所を変更してトランスから離す必要がある。
で、上写真最上部にある単体USB-DACの出力を平衡プリアンプのRCA入力に入れて同じ音源を聴いてみた。
その結果、ボリューム最大でも殆どノイズが聞こえない。
う~ん、内蔵USB-DACのノイズもこれくらい小さいと良いのだが。
今後何らかの改善を行いたい。
内蔵USB-DACのハムノイズ低減に成功
内蔵USB-DACのハムノイズが気になるので、この週末を利用して改造した。
原因はぺるけさんに頒布して頂いたコイルが電源のトロイダルトランスに近い事である。
現状ではコイル基板は下写真のセレクター基板の黄緑枠の辺りに取り付けていた。正確に言うとセレクター基板の上に二階建てにして載せていた。
写真 LCフィルター基板をトロイダルトランスから離したらハムノイズ激減した
そのLCフィルター基板を上写真のように、トロイダルトランスから出来るだけ離してプリアンプ基板の裏側位置に移動した。
その結果、ハムノイズは大幅に低減出来た。
かつ、コイルの角度がハムノイズの大きさに敏感に影響するので、左右コイルの角度を変化させて最もハムノイズの少ない位置を探った。
その結果、平衡プリアンプボリューム最大、ローランドパワーアンプSRA-50の入力ボリューム最大にしたら少し聞こえる程度。
これは、単体USB-DACを平衡プリアンプを通してローランドアンプに接続した場合と遜色ないレベルの性能だ。
と言う事で、ハムノイズ問題は無事に解決した。
なお、今回のハムノイズ対策の過程で、LCフィルター基板を取り去って音を出してみた。
そうすると、当然であるがハムノイズは殆ど聞こえない。
しかしながら、平衡プリアンプのボリュームを回すと「ボアボア」と言う低周波のノイズがスピーカーから出る。ボリュームを回すと出るが、回し終わると出ない。
ぺるけさんのLCフィルターはそう言う低周波のノイズを除去する効果もあるようだ。
差動ペア2SK170を熱結合する
ぺるけさんの解説記事によると差動入力の二個の2SK170を熱結合するとDCバランスはより安定するとの事だ。
ぺるけさんの場合には、太目の銅単線を二個の2SK170に橋渡ししてエポキシ系ボンドで接着する手法を採用している。ボリュームのアース線に使ったやつだ。
今回ぺるけさんに頒布して頂いたパーツの中にはその銅単線も入っているのだが、ワテの場合は2液混合エポキシ接着剤を混ぜると手がべとつくのが嫌いなので別の手法を採用した。
ワテが使ったのはこれだ(下写真)。
写真 熱伝導ゴム(厚みは5mmくらい)
熱伝導率の良いゴム素材だ。
例えばこんな感じの製品。
ワテが使ったのは、確か昔、ジャンク屋の店頭で見付けた何かに使おうと思って買っていたやつ。
そのゴムを小さく切って二つの2SK170の間に挟んで周りをアルミテープでグルグル巻きにした(下写真)。
写真 2個の2SK170を高伝導性ゴムとアルミテープで温度結合した
温度結合した後で、DCバランスをほぼ0mVに調整した。その後、数時間動作させDCバランスの変動を調べた。
その結果、DCバランスは±10mVくらいの範囲に収まっているので、いい感じだ。
ぺるけさんの製作記事では20mV以下が目標値だ。
エミッタ抵抗値が22Ω×2で、ライントランスのDCRが20~50Ωくらいありますから、電圧差を20mV以下に追い込むことができればライトランスに流れる直流を0.5mA以下にできます。
タムラのこの種のトランスはプロ用ミキサーのファンタム電源などの要求仕様を満たすために、2つの巻き線のDCRを精密に揃えてあります。
これは一般のオーディオ用トランスにはみられない特徴です。使用するライントランスの1次側の2つの巻き線それぞれのDCRを測定して確認してください。
引用元 http://www.op316.com/tubes/balanced/balprefet-v2.htm
自作金田式風レギュレーター電源回路の熱対策
即席で作成した金田式風レギュレーター電源回路であるが、出力トランジスタは手で触っても少し暖かい程度だが、念のためにヒートシンクを付けた。
写真 電源回路のトランジスタに銅製ヒートシンクを貼り付けた
ワテが使ったのは下図の製品ではないが似た様なやつ。
アルミ製でも良かったのだが、銅製にも関わらず値段が安かったので使ってみた。
まとめ
三回に分けて「ぺるけ式FET平衡プリアンプ」の製作過程を紹介した。
今回初めてぺるけさんにパーツの頒布をお願いしたが、物凄く有難い。
何と言っても必要なパーツが秋葉原価格と同じくらいの料金で送って貰えるのだ。
抵抗、コンデンサなどのパーツだけでなく、配線に必要な線材、ネジ、スペーサー、放熱用銅線、その他一式が揃っているのだからこんなに有難い事は無い。
あとは製作記事に従って作るだけと言う簡単さ。
感想と反省点
今回はタカチの薄型シャーシ(OSシリーズ)を使った。
コンパクトなシャーシを採用したが、ラッチングリレー式セレクター基板がシャーシの半分くらいを占めてしまったので、基板を取り付ける余裕が無くて苦労した。
秋月ラッチングリレーを使った入力セレクターは、いい感じで動いている。
なお、反省点としては、普通にロータリースイッチで入力を切り替える方式に比べると配線量は減ったかと言うと、そうでもない。
つまり、普通のロータリースイッチ式セレクターなら、多数の信号線をロータリースイッチに配線する手間が掛かるが、ラッチングリレー式の場合は、ロータリースイッチは単にリレーを切り替える用途なので5チャンネルの分の5本の信号線の配線だけで良い。
ところが、リレー基板にはXLR5コネクターやAKI-DAC、RCAコネクターなどの信号線を多数接続する必要があるのだ。なので、配線の手間は殆ど変わらない。
従ってもし改良するなら、リレー基板をユニバーサル基板で作るのではなくて、専用の基板を起こして手配線を極力減らすのが良いだろう。
今後の反省材料にしたい。
と言う事で、予想に反して大きなトラブルも無く、順調に完成させる事が出来た。
ぺるけさん設計のアンプは自然な音で長時間聴いていても耳が疲れない。
皆さんにもお勧めしたい。
次はパワーアンプを作りたいと思っている。
使用レポート
完成したのが2018年7月末だ。
本日が2018年10月27日(土)なので約三カ月使った事になる。
ワテの場合、このぺるけ式平衡プリアンプはワテのPCオーディオ環境で利用している。
その辺りは以下の記事で紹介している。
同じぺるけ式平衡プリを作る予定の皆さんの為に、三カ月の使用レポートを紹介したい。
- ノイズが皆無
- 長時間聴いても疲れないナチュラルサウンド
- 繊細で透明感がある
こんな印象だ。
その存在を忘れるくらい音に色付けをしないアンプに感じる。では無くても良いかと言うとそうでは無くて、このアンプを通す事によってその独特の透明感が音に現れるのだ。
音に色付けをするのではなくて、音の中から本来の原音のみを取り出す感じ。ほんまかいな!?
まあ、電気的にはそんな事はやっていないので、あくまでワテの平衡プリアンプに対する印象を感覚的に表現したものだ。
この平衡プリアンプの下流にローランドSRA-50パワーアンプを繋いでオーラトーン5Cで聴くと言うのがワテのPCオーディオシステムだ。
さらに、先日作成したバランスヘッドホンをこのSRA-50に繋いで聴く事もある。
SRA-50はバランス出力では無い普通の小型パワーアンプだが、それでも素晴らしいナチュラルサウンドがヘッドホンに広がる。
今後は、バランス駆動ヘッドホン用にバランス出力パワーアンプを作りたいと思っている。
と言う事で、ぺるけ式FET平衡プリアンプは皆さんにお勧めしたい。
アンプを買う
真空管式でコンパクトなプリアンプだ。この値段なら買ってみても良いかも。
フォステクスのデジタルアンプだ。出力は20W+20W(4Ω) もあるので、PCオーディオでスピーカーを鳴らすには十分なパワーだろう。
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